ビジネスパーソン1,000人に聞く!生成AIの利用実態と意向
近年注目が集まっている「生成AI」。ChatGPTをはじめ、ビジネス領域において生成AIはどれほど浸透しているのでしょうか。ビジネスパーソン1,260人を対象に実施した最新調査から、生成AIの認知度や利用実態、今後の展望について考察していきます。
2023年の「新語・流行語大賞」トップ10に入るなど、近年注目を集める「生成AI」。生成AIを一躍有名にした「ChatGPT」は、2023年に最もWikipediaで検索・閲覧された単語になりました。また、ChatGPTだけでなく、MicrosoftやGoogleといったビッグ・テックが生成AIを搭載した新製品を発表したり、新たに画像生成AIが登場するなど、昨今、生成AIはニューストピックを賑わせています。その中で、AIに対する期待や不安などさまざまな声が聞かれますが、ビジネス領域において生成AIはどれくらい浸透しているのでしょうか。
本記事では、ビジネスパーソン1,260人を対象に実施した「生成AIに関する意識・実態調査(2024年1月)」の結果をもとに、その認知度や利用実態、今後の展望について考察していきます。
「生成AI」の認知度
Q:あなたは「生成AI」という言葉を知っていますか。
「生成AI」に関して、51.8%が「知っている」、36.8%が「聞いたことがある」と回答しており、両者を合わせると約9割の人が「生成AI」という言葉に触れていることになります。生成AIは、専門的な技術用語であるにも関わらず、多くの人がある程度の認知を持つことになったのは、ニュースや新聞、SNSなど、多数のメディアで取り上げられ、人々の関心を引きつけたためであると考えられます。
生成AIサービスの認知度ランキング
Q:知っている生成AIサービスは次のうちどれですか。
生成AIサービスの認知度では「ChatGPT(チャットジーピーティー)」が73.8%と圧倒的に高い結果となりました。これは、ChatGPTがメディアで頻繁に取り上げられたり、SNSで実用例が共有されたことから、人々の間で話題になったのが理由として考えられます。
次いで、Microsoftの「Bing(ビング)」が37.3%で、Googleの「Bard(現 Gemini(ジェミニ))」や「AIチャットくん」など他のサービスも25%前後でランクインしています。しかし、ChatGPTに比べると認知度は低く、ChatGPTが生成AIの代名詞のようになっている現状がうかがえます。
「GitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)」や「Stable Diffusion(ステイブル・ディフュージョン)」「DALL・E(ダリ)」などは、特定の専門分野や趣味の分野で使われることが多いためか、10%未満の認知度となっています。
未来への扉かパンドラの箱か?生成AIに対する世間の認識
Q:「生成AI」のイメージについて、あてはまるものを教えてください。
最も多い回答は「業務効率・生産性を高める」となっており、生成AIが業務において有益なツールとして認識されていることを示しています。また「暮らしを豊かにする」「新しい仕事が創出される」も3割を超えており、多くの人々が生成AIのポジティブな影響に期待を寄せています。
一方で約2割の人は「人間の仕事を奪う」や「何となく怖い」と回答しており、生成AIは一部の人々にとって懸念や不安の対象になっていることが伺えます。これは、AIの急速な進歩がもたらす社会的変化、または経済的変化への不確実性や恐れを示していると言えるでしょう。
日常業務における「生成AI」の利用実態
Q:あなたは日常業務の中で、生成AIツール/アプリケーションを使っていますか。
31.9%の人がすでに「業務で利用している」と答えており、生成AIが多くの業務で有用なツールとして確立しつつあることを示しています。加えて、25.6%が「試験的に利用している」と回答しており、新しい技術への関心や実地試験が積極的に広がっている状況です。
「利用を検討している」と回答した人は18.4%で、将来的にAIの利用がさらに拡大する余地があることの暗示といえるでしょう。
ただし、24.1%が「利用していない」と答えていることも注目すべき点です。このグループは、生成AIに対する懐疑的な見方や、必要性がない、あるいは業務で利用するのに障壁があることを示している可能性があります。
また、企業側からは生成AIが自社データを学習することによる情報資産の流出を懸念する声なども聞かれます。今後、入力データを学習しない生成AIサービスが増えてくることで、心理的ハードルも下がることが考えられます。
業務でよく利用されている生成AIサービスとは?
Q:実際にどのような業務で、生成AIツール/アプリケーションを利用していますか。
調査結果からは、「原稿、メール、キャッチコピーなどの文章作成」「記事シナリオの作成」「ドキュメントの要約」など、文章に関連する業務で広く生成AIが利用されていることがわかります。また、「今後、どのような業務で「生成AI」を活用したいと思いますか」という問いに対しても、同じように文章関連の業務で活用したいという回答が多く見られました。生成AIとの親和性が高い定型的なテキスト業務で利用することで、効率を高められるためでしょう。
プログラミング関連では、「プログラムコードの作成」「プログラムコードのチェック」「データ抽出」といった技術的な業務で生成AIが利用されていますが、テキスト関連の業務に比べるとその比率は低めです。これは、プログラミングは高度な専門知識を要するため、AIツールの出力精度に対する要求が高いことを反映している可能性があります。
画像、動画、音楽関連業務など、いわゆるクリエイティブ領域での生成AIの利用はさらに限られています。この結果は、生成AIには創造的な業務がまだ不完全な分野であることを示唆しています。AIの生成能力がこれらの分野で人間のクリエイティブな作業に匹敵するようになるには、さらなる技術の進化が必要でしょう。
今後の課題と期待値
生成AIの登場は、世界中に大きなインパクトを与えました。ビジネス領域での利用も広がっており、今後さらに多様な分野で活用されていくことが予想されます。その中には生成AIに関係するまったく新しい仕事が登場することも考えられます。
しかし、一部には「人間の仕事を奪う」などの否定的な意見も存在するため、これらの懸念を緩和するための教育や啓発が必要です。また、生成AIの規制や法整備の必要性を感じている人が一定数いることからも、いかにAIを倫理的に使用し、プライバシーや著作権などの問題に向き合うかも今後問われていくでしょう。
実際、2023年10月には主要7カ国(G7)が開発企業向けの国際指針と行動規範で合意しています。同年11月には、日本政府がAI開発者および提供者を対象にルールを守らせる措置の検討を始めると発表しました。そのなかで、第三者認証や外部監査などの枠組みの設置も例示されています。
今後、生成AIの技術進歩と市場の拡大、社会制度の整備が進むにつれて、さまざまなのAI技術がビジネスに組み込まれていくでしょう。そのためには、企業側にも新しい生成AIサービスの情報をキャッチアップしつつ、業務に取り入れられるものは取り入れていく積極的なチャレンジが求められます。
参考: