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生成AIで作った文章や画像は著作権侵害にあたるのか?利用時に留意すべきポイント

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生成AIが社会に認知される一方で、利用者のモラルや法整備が追いついていないのが実状です。本記事では、生成AIによって生み出されたコンテンツの著作権について、AIエンジニアが解説していきます。

目次

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2023年にChatGPTが話題を席巻してからというもの、生成AIは急速に社会に認知され、さまざまなシーンで利活用が進んでいます。しかし一方で、技術の進化に対して利用者のモラルや法整備が追いついていないのが実状です。本記事では、生成AIによって生み出されたコンテンツの著作権はどのような扱いになるのかを解説し、動向を考察していきます。

生成AIで何ができるのか?トレンドや最新情報を紹介

生成AIは、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、自然言語処理を活用して大量のデータを学習させることで、最適と考えられるデータを予測・推論する技術です。生成AIサービスの代表格であるChatGPTは、ユーザーの問いかけに対して論理立てて回答を返してくるなど、世界中の人々を驚かせました。

ChatGPTのほかにも、Google、Metaなどのビッグテック各社も独自のAIを開発しています。2024年2月には、Googleが「Gemini 1.5」を発表。長いコンテキストを理解し、大量のデータを扱えるようになったことに加えて、マルチモーダル(文章、画像、音声など複数のインプットを処理可能)に対応できるようになりました。ほかにも、OpenAIがテキストから動画を生成できる新サービス「Sora」を発表するなど、生成AIの裾野は広がっています。

すでに生成AIを広告で活用する企業も出てきています。例えば、飲料メーカーの伊藤園は、AIで生成したAIタレントを日本で初めて採用しました。AIタレントの現在と約30年後の姿を見せることで、健康的に年齢を重ねる様子を表現しています。また、日本コカ・コーラはChatGPTとDALL-Eを活用して、誰でも簡単にクリスマスカードを作れるAI画像生成ツール「Create Real Magic」を制作し、キャンペーンとしてWebサイト上で展開しました。メールアドレスの登録後、「テーマ」や「シーン」、「スタイル」を選び、イメージに合ったプロンプトを入力すると画像が生成されるというものです。

一方、業務の中で生成AIを活用する動きも出てきています。ドキュサイン・ジャパンが日本国内のビジネスパーソン約1200人を対象に実施したアンケート調査「生成AIの利用実態」では、日常業務で生成AIサービスを使っているかの問いに対して、約32%が「業務で利用している」、約26%が「試験的に利用している」と回答。半数を超えるビジネスパーソンが生成AIを日常業務に取り入れていることがわかります。

著作権侵害や情報漏えいに注意!生成AIを利用する際に気を付けるポイント

しかし、生成AIを業務で利用する際には注意が必要です。例えば、生成AIサービスを利用する際に自社の機密情報を入力してしまうと、そのデータが学習に利用されて情報漏えいにつながるリスクも潜んでいます。また、大規模言語モデルは、まるで事実のように文章を生成しますが、中には誤っている情報が含まれている可能性も否定できません。このように、生成AIが事実でない情報を作り上げてしまうことを、ハルシネーション(幻覚)と呼びます。

一方で、利用者のモラルやクリエイターの著作権を懸念する声も聞かれます。特に顕著なのが、生成AIによって作られた作品の著作権に関してです。イラストレーターや画家が手がけた作品を、データで生成AIに学習させ、絵のタッチが似た画像を生成し、SNS上で自分が描いたように公開する行為が問題として挙げられています。そのほかにも、新聞社の記事をもとに海賊版の記事を生成し、Webサイトで公開するといった行為も問題視されはじめています。

こうした例の1つとして、広東省広州インターネット裁判所では、世界初となる生成AIサービスによる著作権侵害の有罪判決が出ています。「ウルトラマン」で有名な円谷プロダクションから独占使用権を得た原告の中国企業が、同業の中国企業が生成AIサービスを使って無断で「ウルトラマンの画像」を生成、商用利用したとして著作権侵害であると訴えました。これを受けて、裁判所は権利侵害を認め、経済的損失として1万人民元(約20万円)の賠償を命じています。

このように、クリエイターが多大な労力をかけた創作物を、生成AIで模倣することの是非が問われています。

生成AIで作られたコンテンツの著作権と考え方

生成AIで作られたコンテンツについて、近年、著作権に関する議論が進められていますが、生成AIを利用した創作物の著作権は認められていません。これは、思想や感情が介在せずに制作された作品や、単なるデータ(事実)、ありふれた表現、表現でないアイデア(作風・画風など)などは、著作権法による保護対象には含まれないためです(※1)。

例えば、あるユーザーが特定のイラストレーターのテイストに似た作品を発表したとします。この場合、イラストレーターは著作権侵害を訴えることができますが、自分の著作物であることを証明しなくてはなりません。しかし、すべての制作物に対してイラストレーターが毎回著作物の証明をするのは現実的ではないでしょう。

また、今まさに議論が進められている取り組みもあります。米国Microsoftとオランダのデルフト工科大学の共同プロジェクト「The Next Rembrandt」では、オランダの画家レンブラントの絵画346点を3Dスキャンし、本物のレンブラントの作品と区別できないようなレンブラント“風”の作品が生み出されました。レンブラントの作品はパブリックドメイン(著者の死後一定期間が経過した著作権フリーのもの)ですが、こういった生成物の著作権は誰が持つべきか、この取り組みに著作権は認められるべきか、議論が進められています。

なお、「Open Legal Community」では最新のAI知財情報を発信しています。あわせてご覧ください。

AI時代の著作権保護における取り組み

一方、クリエイターの著作権を守る取り組みやテクノロジーも出てきています。

SnackTime社は、今年、画像に対して特殊なノイズを加えてAIが学習できないようにする画像透かしサービス「emamori」をリリースしました。画像を「emamori」にアップロードするだけで、自動でノイズ処理が施され、機械学習に転用できなくするものです。

また、OpenAIも画像生成AIモデル「DAL-E」で生成された画像に、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)を差し込む機能を発表しました。C2PAは、コンテンツがオリジナルなのかを判断できるメタデータを指します。ChatGPTのDAL-Eで画像を生成すると、利用されたAPIがOpenAI-APIであることや、利用されたツールがDAL-Eであることが表示されるようになります。

今後はNFT(Non-Fungible Token)技術を使って著作物の真偽を判断するサービスの登場や、アーティストの作品が生成物ではなく唯一無二のものであることを証明する動きも出てくるでしょう。

画像や文章をはじめ、生成AIが生み出すコンテンツは今後さらに増えていくことでしょう。生成AIを利用した創作物に対してどのような規制をかけていくのかは、政府と民間企業によって議論が重ねられていくことが見込まれます。それに伴い、特に生成AIをビジネスで利用する際は、コンプライアンスを遵守すべく最新情報を取り入れた上で、活用を広げていくことが望まれます。

出典:※1文化庁著作権課「AIと著作権」p9

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