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日本はデジタル後進国?!「世界デジタル競争力ランキング」に見る、日本が目指すべきデジタル化とは

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2017年より、国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表している「世界デジタル競争力ランキング」。最新のランキングでは、日本は前年の調査から3つ順位を落とし、過去最低の32位となりました。この結果や評価について検証し、日本が目指すべきデジタル化の姿を考えていきます。

国際経営開発研究所(International Institute for Management Development)(以下、IMD)が2017年から毎年発表している「世界デジタル競争力ランキング(2023年)」において、日本は前年の調査から3つ順位を落とし、過去最低の32位となりました。本記事では、この結果を検証しながら、日本が目指すべきデジタル化のあるべき姿を考察していきます。

「世界デジタル競争力ランキング」とは

「世界デジタル競争力ランキング」は、スイスにあるビジネススクール「IMD」の世界競争力センター(World Competitiveness Center)が発表しているランキングです。2017年に初めて発表し、2023年で7回目となります。このランキングの対象となっているのは64カ国・地域です。

ランキングのもとになっているのは、対象の国・地域で実際に行われている経済活動の結果に基づいて集計・公表されるデータと、政府や企業の幹部へのアンケート結果です。それらのデータによってDXに着手する際、政府や企業が注力すべき分野を明らかにしています。ランキングを出す際は、社会の変革につながるデジタル技術を導入・活用する能力を、以下の3つの要素から評価しています(※1)(※2)。

  1. 知識(新しい技術を発見、理解、構築するために必要なノウハウ。具体的には、人材、教育・訓練、科学に対する取り組み)

  2. 技術(デジタル技術の発展を支える全体的な環境。具体的には、規制や技術の枠組み、資本)

  3. 将来への準備(デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する国の準備度合い。具体的には、姿勢の柔軟さ、ビジネスの俊敏性、IT統合)

世界デジタル競争力ランキング(2023年)の総評

2023年のランキング上位5カ国は、以下の通りです。

  • 1位:米国

  • 2位:オランダ

  • 3位:シンガポール

  • 4位:デンマーク

  • 5位:スイス

米国が1位になった要因は「知識」「技術」「将来への準備」の3つの要素すべてにおいて堅調なパフォーマンスを収めたことにあります。オランダは、「知識」と「将来への備え」を強化したことが功を奏し、前年より順位を4つ上げて2位になりました。シンガポールは、「知識」を向上させ、前年より1つ上の3位に上がっています。地域別にみると、2017年の調査スタートから一貫して東アジア(中国、香港、台湾、韓国、日本)と北米が、デジタルイノベーションの中核を担っています。

また、ランキングの巻末では、急速に変化しているデジタル環境について、特に現代の重要な脅威であるサイバー犯罪に対応するために適切な施策が必要だと指摘されています(※3)。

日本のデジタル競争力は?レポートから読みとれる日本の課題を探る

今回のランキングにおける日本の順位は、32位でした。前年の調査から3つ順位を落とし、過去最低になっています。「知識」は前年と同順位の28位にとどまりましたが、「技術」で順位を2つ下げて32位に、「将来への準備」で4つ下げて32位になったことで、全体の順位が低下しました。以下が、ランク付けにより明らかになった強み(順位が上の項目)と弱み(順位が下の項目)です (※3)。

▼強み

  • 【知識】高等教育における教師1人当たりの学生数(3位)

  • 【技術】無線ブロードバンドの普及率(2位)

  • 【将来への準備】市民の行政への電子参加(1位)

  • 【将来への準備】世界での産業ロボット供給(2位)

  • 【将来への準備】ソフトウェアの著作権侵害(違法コピーや所有)への対応(2位)

▼弱み

  • 【知識】上級管理職の国際経験(64位)

  • 【知識】デジタル/技術的スキル (63位)

  • 【将来への準備】機会と脅威に対する企業の対応 (62位)

  • 【将来への準備】企業の俊敏性(64位)

  • 【将来への準備】ビッグデータや分析の活用(64位)

この結果について、IMD北東アジア代表の高津尚志氏は「技術的枠組みや科学的集積における優位性を、ビジネスの俊敏性、規制の枠組み、人材が阻害する構造が変わらないまま低落が続いています。ただ、ビジネスの俊敏性、IT統合などに下げ止まり傾向がみられるなど、今後に期待できる部分も垣間見えます」と述べています(※4)。今後は、強みをさらに強化しながら、行政の規制緩和や企業の積極的な施策によって弱みを改善していくことが、重要になってくるでしょう。

効果的なデジタル化を目指して:日本のビジョンと戦略は?

こうした状況を受け、日本政府は今以上世界に遅れをとらないための対策を講じています。2024年6月21日には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を目指すための計画を進めています。

具体的にはマイナンバー制度の推進、事業者向け行政サービスのデジタル化の推進およびシステム整備などに加え、デジタルに関する製品やサービスを誰でも利用できる環境の確保などが提案されています(※5)。

実際、企業においてはデジタル化の未実施、または今後も予定のない企業が全体の約50%を占めています。デジタル化の主導者も不足しており、全体の約35%にとどまっていますが、米国は約90%、ドイツは約70%となっているので、それと比較するとかなり低い割合であるといえます(※6)。そこで、デジタル産業基盤をより強くするために、AIやデータの徹底活用、デジタル活用やDX推進のための人材育成の強化などが対策として挙げられています。

日本がデジタル化を進めるメリットには、行政手続きや業務の効率化、それに伴う人材不足問題の解決があります。一方、デメリットとしてはインターネットやPCなどの情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差「デジタルディバイド」があります。例えば、行政の手続きがデジタル化された場合、普段からスマートフォンのアプリなどを使い慣れていない方が手続きをしにくくなる、といった問題が発生する可能性があります。これが、「『デジタル化』に対する不安やためらい」という課題を作り出しています。こうした課題の解決に向け、総務省は、スマートフォンを利用したオンライン行政手続などに慣れていない人が助言を求めたり、相談をしたりできる講習会形式の「デジタル活用支援推進事業」を2021年から行っています(※7)。このような事業により、デジタル化から取り残される人の減少が期待されています。今後は、同様の取り組みの継続および発展が重要になってくるでしょう。

多様な幸せが実現できる社会につながる、デジタル化を目指して

日本政府を中心にデジタル化に向けた課題解決が進められる一方で、デジタル化を主軸とした先進的な取り組みも行われています。その1つが、自治体と企業が事業を共に創りだすグローバル・オープンイノベーション・プログラム「スマートシティX」です。同プログラムは「ニューノーマル時代のスマートシティ」をテーマに、プログラムに参加する各業界を代表する企業や自治体と世界中のスタートアップが協働し、産業や技術の視点だけではなく、生活者目線で価値の高いサービスおよびアプリケーションを作り出しています。分野はデジタル地図、防災、予防医療など多岐にわたっており、社会的意義の高いデジタル技術の創出につながっています(※8)。

デジタル化は、適切に進めることで業務効率化や、多様な人々が生きやすい社会につながっていく改革です。世界の流れに遅れをとらないためにも、日本のデジタル競争力を一層強化していくことが、今求められています。

出典:

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