100%電子契約化を目指すユニリーバ・ジャパン法務部が見据える契約管理実務の未来
働く場所・時間を社員が選べる新しい働き方「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)を推進し、サステナブルなブランドを育成するユニリーバ・ジャパン。同社はイギリスに本社を構える世界最大級の消費財メーカー、ユニリーバ社の日本法人として、1964 年から日本で事業を展開しています。国内に 2 つの工場があり、ラックスやダヴ、ポンズ、リプトンなど人気の高い生活消費財を日本市場に向けて製造・流通しています。日本の社会やビジネスを取り巻く環境が大きく変化する中、同社は 2020 年 9 月に「2021 年 3 月までに『100% 電子契約化』を推進する」と発表しました。(*1)
『100% 電子契約化』の実現により、契約締結までの時間短縮をはじめ、印刷や保管のためのスペースやコストの削減、セキュリティの強化など、数多くのメリットが得られます。さらに経営的な利益だけではなく、書面と印鑑が中心だった法務部門による契約管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速されます。
100% 電子契約で全社のDXを推進
ユニリーバ・ジャパンが Docusign eSignature(ドキュサインの電子署名)を活用して『100% 電子契約化』を 2021 年 3 月までに推進する背景について、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 代表取締役、ジェネラルカウンセルの北島敬之氏は、次のように話します。
「弊社で 100% 電子契約を推進する理由は、数ある契約をスピーディーに締結するためです。契約書を印刷して製本し、それを送付して押印してもらう、というこれまでの手順では、非常に時間と手間がかかっていました。電子契約はこうした課題を解決します。また、契約だけでなく社内の申請手続も電子化を進めています。ある部署では、これまで 2 週間以上かかっていた紙ベースの申請処理が、電子的に進めることにより1週間程度に短縮された例があります。さらに、締結済みの契約書類やその他の紙類の保管場所も不要になり、印刷、郵送にかかるコストや印紙代もかからないので、コスト削減にもつながります。」
同社では 2019 年末より、パイロットとして IT 関連の比較的導入しやすい契約書から電子署名の利用を開始しました。社内での推進にあたっては、法務部の北口整子氏と万代寛子氏が、現場や取引先からの問い合わせに細かく対応すると共に、IT部門と連携して、社内のイントラネットで電子契約に関連する情報発信を積極的に行ってきました。その取り組みの内容について、北口氏は次のように説明します。
「契約の電子化を推進するために、マネジメントレベルと現場レベルの上下から浸透していくよう、根気よく情報を発信し続けました。マニュアルやQ&A集を作ったりして、現場の人たちが電子契約のメリットを理解し、自分ごととして便利だと思ってもらえるよう丁寧に説明を行ってきました。」
社内への電子契約の浸透にあたっては、IT 部門によるプロセス開発なども後押しになりました。現場が電子契約を理解するメリットについて、万代氏は営業部門での変化について振り返ります。
「電子契約の導入にあたり、営業担当者はその仕組みを相手先に説明する必要があります。そのため、契約に対する理解が深まり、これまで法務部任せだった契約そのものを意識してもらえるようになりました。また、お客様とのコミュニケーションが増え、(信頼)関係の構築につながっている、という声も聞かれます。」
Docusign CLM による契約管理で法務の未来ビジョンを描く
「100% の電子契約化には、将来的なメリットも多くあります。例えば、M&A や事業売却などを実施するときに、契約書が電子化されていると、検索にかかる時間が大幅に短縮できるだけではなく、デュー・ディリジェンス時間や関連するリーガルフィーの削減にもつながります」と、北島氏は今後の成果に触れます。
また、電子署名と合わせて、法務部では Docusign CLM を活用した契約管理の刷新も視野に入れています。北島氏は「契約の履歴や関連する契約、あるいはそれらの変更や終了などの紐づけも、これまでは不十分でした。CLM(契約ライフサイクルマネジメント)を導入すれば、締結済みの契約書を探す手間が省けるだけではなく、ビジネスにおいてどのような契約が締結されているのかについて全体の状況もクリアに把握できるようになり、将来のビジネスチャンスを考えるきっかけになると期待しています」とビジョンを述べます。
法務部にとって、100% 電子契約化は業務改革のゴールではなく、新たなデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたスタートとなります。北島氏は「『何かを“チェック”するだけの仕事は極力減らし、テクノロジーを活用して“アクション”や解決策を生み出すことに時間を使う』というグローバル・リーガルの方針があります。その意味でも、契約の電子化は、法務の可能性を飛躍的に広げ、未来を作る取り組みだと思います。電子メールで働き方が変わったように、電子契約はそれに匹敵するような変化をもたらしてくれると思います。」と語ります。
電子契約は電子メールが普及したことに匹敵する、DX推進に不可欠なテクノロジーです。ユニリーバ・ジャパンでの100%電子契約化を推進すると同時に、電子契約をもっと世の中に浸透させていきたいと考えています。
北島敬之 氏代表取締役ジェネラルカウンセル, ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
*1プレスリリース(2020年9月10日)ユニリーバ・ジャパン、2021年3月までに「100%電子契約化」へ