不動産売買契約をドキュサインで電子化するツクルバの取り組み
中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営する株式会社ツクルバ(以下、「ツクルバ」)。メディアと不動産仲介を掛け合わせた新しい不動産の購入体験を提供する同社は、2021年2月、ドキュサインの電⼦署名を利用し、国内では先進的な事例となる不動産売買契約書の電子化対応を開始しました。
不動産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦
DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れているといわれている国内の不動産業界。不動産取引には数多くの紙の書類が存在し、物件情報の提供から内見、契約手続に至るまで書面・対面といった従来の慣習が根強く残り、なかなかIT化が進まないという現状があります。しかし近年、国土交通省を中心に契約書の電子化やテレビ、パソコンなどの端末を利用して重要事項説明を行う“IT重説”の導入について本格的な議論が進められ、さらにコロナ禍の影響も重なり、急速に取り巻く状況が変わろうとしています。
ツクルバは以前より、不動産流通に特有の長いバリューチェーンをテクノロジーで統合し、顧客体験をよりスムーズで最適なものにするための変革を推進してきました。例えば、購入検討段階のユーザーは、カウカモアプリを利用することで、価格や間取りといった定量情報だけでなく、ユーザーの興味を刺激する豊富な写真とストーリー仕立ての詳細な取材記事により、まるで実際に内見しているかのような体験がオンライン上でできます。また、紙媒体ではなくシステムを使った物件の提案やウェブ接客も積極的に活用しています。この変革の中で、ツクルバが不動産売買取引において電子契約を導入した背景について、同社カウカモ・エージェントサービス事業部長の春田 亮一氏は、次のように説明します。
「我々は国土交通省が推進している不動産売買のIT活用に関する社会実験に参画してきました。IT重説や契約書面の電子化といった施策は、ユーザーの利便性を向上させ、印紙代の削減によるユーザーの経済的メリットにもつながります。今回のカウカモ取引における売買契約書の電子化対応は、その第一歩となります。」
売買取引契約書の電子化を見据え、社内業務でドキュサインを先行導入
ドキュサインの導入を推進してきた管理本部 法務部長兼広報IRグループマネージャーの重松 英氏は、その経緯を次のように振り返ります。
「数ある電子署名ソリューションの中からドキュサインを選んだ理由は、米国の不動産業界で広く使われていた実績と、世界的に見ても電子署名ソリューションのトップランナーだと考えたからです。私自身も、以前に米国で暮らしていたときに、現地の賃貸契約でドキュサインを利用した経験があり、その使い勝手の良さに驚いた経験がありました。2020年5月、今回の売買契約書の電子化への対応を見据えて、電子署名を導入し、利用を開始しました。」
同社では、まずは社内業務での利用を通して、不動産業界に先駆けた売買取引の電子化を実現するために準備を進めてきました。重松氏は「導入の当初は、不動産分野ではなく、業務委託など会社間におけるさまざまな契約でドキュサインの電子署名を利用しました。そうした利用を重ねる中で、運用に関する知見を積み、またドキュサインからは技術的なサポートを受けることができたので、不動産売買契約書の電子化への対応はスムーズに進みました」と話します。
売買取引契約書の電子化で利便性とコストメリットをユーザーに提供
2021年2月から提供を開始した売買取引における電子契約の事例について春田氏は、「第一号の電子契約は、非常にスムーズでした。お客様がオンラインに慣れていたこともありましたが、こちらからも事前にメールやオンライン会議を通して、電子契約の手順や必要事項を的確にお伝えしていたので、安心してご契約いただけました」と振り返ります。
電子契約を利用すると、購入者は手続きに伴う移動や書面のやり取りといった手間から解放され、紙の契約書で必要だった印紙代の負担も不要になります。一方、不動産業者にとっては、クラウド上に文書が保存されるため、管理が容易になり、紛失のリスクが低減されるというメリットもあります。現時点では、不動産関連の契約にはオンラインだけで対応できない書類もありますが、将来的に電子契約に関わる法整備が整っていけば、契約プロセスの効率性や手続きの迅速さもさらに向上すると期待されています。
春田氏は「今回の電子契約の導入は、物件に関する情報の提供や紹介、内見、契約手続、ローン審査など、一連の不動産手続きにおけるお客様の利便性を向上させるための“デジタル化の第一歩”と位置づけています。残念ながら電子契約はまだ不動産業界では一般的ではなく、売買当事者や手続関係者の意向や方針などで利用できない場合もあります。しかし、可能な範囲で利用していくことで、お客様の利便性向上を推進していきたいという強い思いがあります。今後も、我々は国土交通省が進める重要事項説明書等の電子化の状況を注視し、お客様視点で購入体験を革新していくことを目指してまいります。そして、お客様がいざ買いたいとなったときに、電子化された利便性の高い購入体験を提供できるプラットフォームを整備していきます」と抱負を語ります。
今回の電子契約の導入は、お客様の利便性を向上させるための「デジタル化の第一歩」と位置づけています。今後も、電子化された利便性の高い購入体験を提供できるプラットフォームを整備していきます。
春田亮一 氏カウカモ・エージェントサービス事業部長, 株式会社ツクルバ