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取締役会議事録はなぜ必要なのか?記載すべき内容や押印義務、電子化のメリットを解説

Author 阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士
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会社法に基づき、取締役会の議事については議事録の作成が義務付けられており、定められた事項を漏れなく記載しなければなりません。近年では電子化する企業も増えており、検索性や利便性で多くのメリットを享受することができます。本記事では、取締役会議事録について、記載事項や押印義務、電子化の方法を解説します。

目次

ガラス張りの会議室で実施される取締役会議に参加するグローバル企業の役員

会社法に基づき、取締役会の議事については議事録の作成が義務付けられており、定められた事項を漏れなく記載しなければなりません。従来、取締役会議事録は書面で作成されることが多かったものの、近年では電子化も進んでいます。なぜ、取締役会議事録を電子化する企業が増えているのでしょうか。また、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、取締役会議事録について、記載事項や押印義務、電子化の方法などについて解説していきます。

取締役会議事録とは

「取締役会議事録」とは、取締役会における議事の内容を記した書面または電磁的記録を言います。

取締役会議事録の役割

取締役会議事録の役割は、取締役会による経営上の意思決定等の内容を記録に残し、株主や債権者に対して開示することです。

取締役による経営上のミス等が発生した場合、株主は株主総会決議によって取締役を解任できるほか(会社法339条1項)、株主代表訴訟を通じて取締役の任務懈怠(けたい)責任を追及することができます(会社法423条1項、847条)。

また、株主が被った損害について、取締役に直接損害賠償を請求できることもあります(民法429条1項)。債権者も株主と同様に、取締役に対して損害賠償を請求できる場合があります(同)。株主や債権者が取締役の責任追及等を行うためには、取締役によってどのような意思決定がなされたかを把握しなければなりません。

そのため会社法では、取締役会設置会社に対して、取締役会議事録の作成・保存と、一定の場合には株主や債権者に対して開示することを義務付けています(会社法369条3項~5項、371条)。取締役会議事録は、すべての取締役会の議事について作成が必要です。

取締役会議事録の保存期間と閲覧・謄写請求

取締役会議事録は、取締役会の日(決議を省略した場合には、決議があったものとみなされた日)から10年間、株式会社の本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。

株主は原則として、株式会社の営業時間内はいつでも、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できます(同条2項)。ただし、監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の場合、株主が取締役会議事録の閲覧・謄写を請求するためには、裁判所の許可が必要です(同条3項)。

取締役会設置会社の債権者は、役員または執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できます(同条4項)。

取締役会議事録の作成・保存義務に違反した場合の罰則

取締役会議事録を作成して本店に備え置く義務を怠った場合には、取締役に対して「100万円以下の過料」が課されることがあります(会社法976条8号)。

取締役会議事録の作成方法

取締役会議事録には、会社法施行規則所定の事項を記載しなければなりません。

会社法では、取締役会議事録の作成者および作成期限は定められていません。ただし、登記事項を変更する決議を行った場合は、遅くとも登記手続きの期限である2週間後までには取締役会議事録を作成する必要があります。実務上は、取締役会の開催日と作成時を同日として、取締役のうち誰かが作成することが多いです。

取締役会議事録に記載する内容

取締役会議事録には、以下の事項を記載する必要があります(会社法施行規則101条3項、4項)。

  1. 取締役会の開催日時・場所(取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人・株主がリモート参加した場合には、その出席の方法を含む)

  2. 特別取締役による議決を行う取締役会の場合は、その旨を記載

  3. 会社法の規定に基づき、定款所定の招集権者ではない取締役・株主・監査役・監査等委員・執行役の請求を受けて招集され、またはこれらの者が招集したものであるときは、その旨を記載

  4. 取締役会の議事の経過の要領およびその結果

  5. 決議を要する項目について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名

  6. 取締役会において述べられた次の意見・発言があるときは、その意見・発言の内容の概要

    1. 取締役による競業取引に関する重要な事実の報告

    2. 取締役会の招集を請求した株主が述べた意見

    3. 計算書類の承認をする取締役会において、会計参与が述べた意見

    4. 取締役の不正行為、法令違反、定款違反、著しく不当な事実に関する監査役、監査等委員または監査委員の報告

    5. 監査役が述べた意見

    6. 取締役の責任等の補償に関する、補償をした取締役および補償を受けた取締役による重要な事実の報告

  7. 取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名または名称

  8. 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名

  9. 取締役会の決議があったものとみなされた場合は、次に掲げる事項

    1. 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容

    2. (a)の事項の提案をした取締役の氏名

    3. 取締役会の決議があったものとみなされた日

    4. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

  10. 取締役・会計参与・監査役・会計監査人が、取締役と監査役の全員に対して報告事項を通知したことにより、取締役会への報告を要しないものとされた場合は、次に掲げる事項

取締役会議事録への署名・押印義務

取締役会議事録を書面(紙)で作成する場合は、出席した取締役および監査役が署名し、または記名押印しなければなりません(会社法369条3項)。

署名とは・・・自書にて氏名を記載すること 記名押印とは・・・氏名を自書以外の方法で記載(印字など)した上で、押印すること

☞「署名」「記名押印」の定義や法的効力については、『「記名」と「署名」の違いとは?意味や法的効力を解説』をご覧ください。

取締役会議事録の電子化について

取締役会議事録は、紙で作成する方法のほか、電磁的記録による作成も認められています。

取締役会議事録を電磁的記録で作成する場合は、署名または記名押印に代えて、出席した取締役および監査役による電子署名が義務付けられています(会社法369条4項、会社法施行規則225条1項6号)。

「電子署名」とは、電磁的に記録することができる情報について行われる措置であって、以下の2つの要件をいずれも満たすものをいいます(会社法施行規則225条2項)。

  1. 当該措置を行った者が作成したものであることを示すためのものであること

  2. 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認できるものであること

進む取締役会議事録の電子化、そのメリットとは?

2020年5月、法務省は会社法施行規則の解釈について、取締役会議事録を作成する際に用いる電子署名として、「Docusign eSignature」のようなクラウド型電子署名も法的に有効であるとの見解を明らかにしました。導入がしやすく、日本国内でも普及が進んでいるクラウド型電子署名が認められたことにより、ここ数年、取締役会議事録の電子化を進める企業が増えています。

取締役会議事録を電子化することで、検索が容易になるほか、リモート環境からアクセスできるなど、メリットが多くあります。

検索が容易になる

データベース上の検索機能を用いて、過去の取締役会議事録をスムーズに検索できるようになります。

リモートでもアクセスできるようになる

クラウドサーバー等で取締役会議事録を保存すれば、遠隔地からでも容易にアクセスできます。特にリモートワークを推進している企業や、多数の拠点を構えている企業では、取締役会議事録を電子化するメリットは大きいといえるでしょう。

また、同年9月、法務省は商業・法人登記のオンライン申請時に利用可能なサービスとして、ドキュサインが提供する「EU Advanced」方式の電子署名を指定しました。これにより、登記の添付書類として取締役会議事録を提出する際、「EU Advanced」で電子署名を付与することができます(詳しくは「取締役会議事録の電子化がより一層簡単に」をご覧ください)。

DX推進の流れやリモート化が進むなか、今後ますます取締役会議事録の電子化を望む声は増えていくでしょう。取締役会議事録の電子化をはじめ、取締役会の効率化を考えている方は、ぜひドキュサイン製品の導入をご検討ください。

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Author 阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士

ゆら総合法律事務所・代表弁護士(埼玉弁護士会所属)。1990年11月1日生、東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。弁護士登録後、西村あさひ法律事務所入所。不動産ファイナンス(流動化・REITなど)・証券化取引・金融規制等のファイナンス関連業務を専門的に取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・その他一般企業法務への対応多数。同事務所退職後、外資系金融機関法務部にて、プライベートバンキング・キャピタルマーケット・ファンド・デリバティブ取引などについてリーガル面からのサポートを担当した。2020年11月より現職。一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。弁護士業務と並行して、法律に関する解説記事を各種メディアに寄稿中。

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