「生体認証」の知られざる世界。種類や課題、最新技術を一挙紹介!
スマホや銀行のATMなど、さまざまなシーンで活用されている生体認証。利用者はパスワードを記憶したり、ICカードを持ち歩いたりする必要がなく、利便性や安全性の高さから注目を集めています。
スマートフォンや銀行のATMなど、さまざまなシーンで活用されている生体認証。生体認証は人間の身体的・行動的な特徴をもとに認証を行うため、利用者はパスワードを記憶したり、ICカードを持ち歩いたりする必要がなく、利便性や安全性の高さから注目を集めています。本記事では、生体認証の概要や種類などに触れながら、開発が進められている最新技術について紹介していきます。
生体認証とは
生体認証(バイオメトリクス認証)とは、人間の身体的あるいは行動的な特徴をもとに、本人確認を行う認証方式です。顔や指紋、声などの生体情報は一人ひとり異なる特徴を持っており、加齢による変化などはあるものの、簡単に変えることはできません。ICカードやパスワードのような従来の認証方式よりも、なりすましや偽造が難しく、安全性が高いことからさまざまなシーンで普及が進んでいます。
生体認証の歴史
生体認証そのものの歴史は古く、中国やインドでは古くから個人を識別するために指紋認証が用いられていたことが知られています。また、2001年にアメリカで発生した9.11のテロをきっかけに、防犯対策として空港で顔認証が実施されるようになりました。2000年代半ばには携帯電話や入場ゲートなど、防犯対策以外の用途でも導入が進み、現在はより広い分野で生体認証が使用されています。
活用シーンは?スマホを活用した生体認証も普及
私たちに身近な生体認証の一つがスマートフォンの画面ロック機能です。指紋や顔を認証して、スマートフォンの画面ロックを解除している人も多いのではないでしょうか。また、さまざまなサービスのログインや決済などにも生体認証技術が多く使われています。
ほかにも、銀行のATMやコンサート会場、ホテル・マンション、店舗など、幅広い分野で生体認証が導入されています。中には高度なセキュリティを要する最新のシステムもあることから、今後もさらに多様なシーンでの導入が進んでいくと予想されています。
生体認証の種類
生体認証は、指紋や顔、声などの身体的・行動的特徴を装置で読み取り、あらかじめ登録したデータと照合することで認証を行います。読み取られた情報はテンプレートと呼ばれる情報に変換され、あらかじめ登録されたテンプレートと比較・照合される仕組みです。以下、代表的な4つの生体認証について紹介します。
指紋認証
顔認証
虹彩認証
静脈認証
指紋認証
指紋認証は、指先の指紋を使って本人確認を行う方法です。指紋は一人ひとり特徴が異なり、加齢によって変化しないため、古くから犯罪情報の管理などに使われてきました。現在は比較的安く導入できる小型の読み取り装置が普及し、スマートフォンやPCのロック解除などにも指紋認証が使用されています。乾燥による肌荒れや、入浴後のふやけた肌など、指の状態によって認証精度が下がる可能性がある点に注意が必要です。
顔認証
顔認証は、目や鼻、口、輪郭といった顔の形状や特徴をもとに認証を行う方法です。装置に触れる必要がなく衛生面で安心感があることから、空港のゲートやライブ会場など、大型施設にも導入されています。顔を近づけるだけで認証できる便利な認証方法ではありますが、加齢による変化に対応できない、マスク・メガネなど認証精度に影響するケースもあるなどの課題も残っています。
虹彩認証
虹彩認証は、目の中にある虹彩で本人確認を行う方法です。虹彩とは瞳のなかにあるリング状の模様のことで、一人ひとり特徴が異なるだけでなく左右の目でも違いがあります。生後数年で成長が止まり加齢による変化が少ないため、精度の高い認証方法として注目を集めています。
日本では企業のID認証、会員制施設の管理などに導入されており、海外では銀行のATMで利用されるケースもあります。デメリットとしては、照明が精度に影響を与えたり、導入コストが比較的高いことなどが挙げられます。
静脈認証
静脈認証とは、手の甲や指などを通る静脈のパターンから認証を行う方法です。機器に手のひらをかざすと赤外線センサーが静脈を読み取り、血管の方向や分岐点などをもとに照合します。
静脈認証は銀行のATMなど金融機関で多く導入されており、なりすましや偽造が発生しにくい点が特徴です。血管は外部から見えないため、ほかの人の特徴をまねしたり、認証に必要な情報を抜き取ったりするのが難しいといえます。しかし、認識装置が大型でコストがかかることが多く、体調変化が認証に影響を及ぼすことなどが課題となっています。
ほかにも、DNA認証や音声(声紋)認証、耳形認証、耳音響認証などがあります。また、歩き方や筆跡、スマートフォンを操作する際の癖など、行動的な特徴を利用して本人確認を行う手法もあります。
生体認証の課題
生体認証は、利便性・安全性を兼ね備えた認証方法として普及が進んでいるものの、まだ克服するべき課題も存在します。
生体認証は主に、指紋や静脈など、経年変化の少ない身体的な特徴を使用しますが、そのデータ(生体情報)は重要な個人情報であるため、一度情報が漏えいすると、さまざまなシーンで影響を及ぼす可能性があります。不正アクセスなどによる漏えいを防ぐだけでなく、変換されたデータを簡単に復元できないようにするなど、データの不正利用を防止する対策も求められています。
多様なシーンで使われる生体認証技術 - 活用事例
課題を残しながらも急速に進化している生体認証。昨今、世界中で活用されている生体認証技術の導入事例を紹介します。
【米国】ロサンゼルス郡保安局 犯罪捜査システム
アメリカのロサンゼルス郡保安局では、指紋や掌紋、顔、虹彩を使用して個人を識別する生体認証システムを導入しています。事件現場で採取された特徴をデータベースに登録されたテンプレートと照合して犯罪捜査を行っています。システムの導入により、迷宮入り殺人事件の手がかりを発見し、事件解決につながったこともあります。
【インド】大規模固有識別番号プログラム
インドの固有識別番号庁(UIDAI)では、国民にそれぞれ固有のIDを発行する「Aadhaar(アドハー)プログラム」を実施しています。指紋や顔、虹彩認証などを組み合わせた高精度な生体認証システムを導入し、すべての国民が公平に社会サービスを利用できる社会を目指しています。システムの導入により、納税や食糧需給などで重複登録を防止できるようになりました。
生体認証の未来
近年、優れた生体認証システムとして注目を集めているのが「マルチモーダル生体認証」です。「マルチ生体認証」とも呼ばれており、2つ以上の生体認証方式を組み合わせて行う認証方法です。複数の特徴を用いることで、認証エラーを削減したり、安全性を確保したりする効果が期待できます。
マルチモーダル生体認証でよくある組み合わせは、虹彩認証と顔認証、静脈認証と指紋認証です。「カメラを覗き込む」「装置に手をかざす」といった1つの動作で2つの認証を完了できるため、利用者の負担を軽減することができます。
生体認証は、安全性と利便性を兼ね備えた認証技術です。世界中で導入が進んでおり、大規模な犯罪捜査システムや行政サービスでの実績も増えています。複数の生体認証を組み合わせた認証も開発されており、今後ますます活用が広がり、快適で安全な認証システムとして進展していくでしょう。
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