日本における電子署名の適法性
電子署名は日本の契約上で法的に認められており、法人間の商取引契約や消費者関連契約、人事関連文書、一定の不動産関連文書など、様々な業種・職種で活用されています。今回のブログでは、その根拠、および「電子署名の活用例」と「電子署名や電子取引管理の使用が一般に適切ではない例」をご紹介します。
公開日:2020年1月8日|最終更新:2022年7月19日
『電子署名とは? 今さら聞けない電子署名のキホン』では、電子署名の仕組みや活用例、メリットなど基本的な内容を紹介してきましたが、今回は法的な部分に踏み込んで解説したいと思います。
電子署名とは、電子文書に対して、当事者(間)で、合意意思を示したことを電子的に安全に記録する仕組みや技術になり、これにより誰が何の文書に合意したかということを証拠とすることができ、電子契約に留まらずに幅広い範囲で利用することができます。また、デジタル署名によるオプションで証拠としての効力を高めることも可能です。
電子署名は日本の契約上でも適法であり、その根拠は以下の通りです。
日本法上、契約を有効に成立させるためには、契約が特定の法定書式要件の対象である場合を除き、必ずしも手書きの署名や押印が要求されるものではありません。
一般的な法原則として、以下に記載する一定の限られた例外を除いて、当事者が合意をすれば、その合意が口頭、電子的な書面又は紙などの物理的な書面のいずれによりなされたかにかかわらず、契約は有効に成立します。
有効な契約の存在を証明するために、当事者が裁判所に証拠を提出しなければならないことがありますが、日本の裁判所は、一般に、証拠の採用及び証拠調べにおいて幅広い裁量を有しています。先進的な電子取引管理ソリューションは、契約の存在、真正性及び有効な受諾の裏付けに役立つ、証拠としての効力 を備えた電子記録の提供を可能にします。
なお、契約の形式が原則自由であることは、2020年4月に施行された新民法(2017年成立)の522条2項に明記されています。
電子署名が使用できる例
法人間の商取引契約(秘密保持契約、調達に係る文書、販売契約書等)
人事関連文書(福利厚生関連の文書、その他新入社員の採用手続に係る文書等)
消費者関連契約書(リテール口座の新規開設に係る文書等)
不動産関連文書(売買契約、一般賃貸借契約、その他住宅用不動産及び商業用不動産に関連する文書等)
IP譲渡契約
電子署名や電子取引管理の使用が一般に適切ではない例
任意後見人契約(任意後見人契約に関する法律)
遺言書(民法)
事業用定期借地契約(借地借家法)
保証契約などのように、紙の書面が必要と書かれていても別の条文で電磁的記録が許容される場合もあります。
建設業法の第19条で定められている建設工事の請負契約時の契約は書面でなくとも、国交省の要件を満たす情報通信技術の利用も可能です(法第19条3項)。ただし、国交省の定める要件として建設業法施行規則の第13条の2第2項の要件、ファイルの出力による書面作成と書面の改変が行われていないか確認できることを満たす必要があります。なお、ドキュサインの電子署名が上記の技術的基準を満たしているかについては、グレーゾーン解消制度を利用して確認しています。詳しくは、『ドキュサインの電子署名を建設工事請負契約締結に利用できます』をご覧ください。
電子署名の適法性に関する資料をダウンロード →
参照:
訪問販売等に関する法律(昭和51年法律第57号)
特定商取引に関する法律施行規則(昭和51年通商産業省令第89号)
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)
建設業法(昭和24年法律第100号)
建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)
商業登記法(昭和38年法律第125号)
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)
書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律(平成12年法律第126号)
電子契約の教科書基礎から導入事例まで[改訂版] 宮内 宏 (編著) ISBN 9784539726761
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