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【2024年版】法改正一覧!法改正の変更点をまとめて解説

阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士
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2024年は、労働基準法をはじめ、新しい技術や社会問題に対応したさまざまな法改正が予定されています。本記事では、2024年に施行が予定されている法改正の中から、多くの企業に関係する法改正の一覧と変更点をわかりやすく解説します。

目次

これまでの法律のルールを現代の実情に合わせたり、新たに登場した技術やビジネス、社会問題などに対応するルールを定めるために、毎年数多くの法改正が行われています。2024年にもさまざまな法改正が予定されています。そこで本記事では、2024年に施行が予定されている主要な法改正の一覧および概要を紹介します。

一般的な法改正の流れとは

法改正は一般に、以下の①から⑦までの流れで行われます。法改正の所要期間は、改正法の目的や内容などによって異なります。また、法律の成立・公布から施行までの期間については、多くの場合、公布から6カ月~1年以内の時期に施行されますが、影響力が大きい大規模な法改正については、公布後2年から3年程度の準備期間が設けられることもあります。法改正の手続きの流れについては、『法律はどうやって改正される?法改正の流れや所要期間とは』で詳しく解説しています。

  1. 法律案の原案作成

  2. 内閣法制局による審査

  3. 法律案の閣議決定

  4. 国会における審議

  5. 法律の成立

  6. 法律の公布

  7. 法律の施行

法改正の流れ(法律ができるまで)

なお、本記事で紹介する法改正はすでに施行されているものもありますが、いずれも法律の公布が済んでおり、2024年中に施行される予定です。

2024年に施行される主要な法改正をチェック

2024年中に施行が予定されている法改正のうち、多くの企業に関係すると思われるものとしては、以下の各改正が挙げられます。

人事・労務関連

  • 労働基準法施行規則:労働条件通知書の記載事項追加(4月1日)

  • 労働基準法施行規則・告示:裁量労働制に関する変更(4月1日)

  • 労働基準法・改善基準告示:運送業ドライバーの労働時間規制変更(4月1日)

  • 労働基準法:建設業の労働時間規制変更(4月1日)

  • 労働基準法:医師の労働時間規制変更(4月1日)

  • 労働基準法:鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業の労働時間規制変更(4月1日)

  • 厚生年金保険法・健康保険法:厚生年金・健康保険の適用範囲拡大(10月1日)

契約・文書関連

  • 電子帳簿保存法:電子取引データの電子保存の完全義務化(1月1日)

  • フリーランス保護新法:フリーランスの保護に関する各種規制の新設(11月1日まで)

  • 景品表示法:不当表示に関する確約手続きの導入・刑事罰化・課徴金制度の見直し等(11月17日まで)

知的財産関連

  • 意匠法:新規性喪失の例外規定の要件緩和(1月1日)※2024年4月1日にもその他の改正が施行予定

  • 商標法:登録可能な商標の拡充・登録手続きの要件緩和等(4月1日)

  • 不正競争防止法:ブランド・デザイン・営業秘密・限定提供データの保護強化等(4月1日)

訴訟関連

  • 民事訴訟法:口頭弁論のオンライン実施(3月1日)

それでは、2024に改正される法律について、詳しく解説していきます。

人事・労務関連の法改正の概要

人事・労務については、2024年4月1日にまとめて以下の法改正が施行されます。

2024年4月1日施行|人事・労務関連の法改正

①労働条件通知書の記載事項追加(労働基準法施行規則)

労働者を雇用する際に交付すべき労働条件通知書に、就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲を新たに記載することが義務付けられます。有期雇用労働者については、無期雇用への転換に関する事項の記載も必要になります。

②裁量労働制に関する変更(労働基準法施行規則・告示)

専門業務型裁量労働制の対象業務にM&Aアドバイザリーの業務が追加されます。また、専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制のそれぞれについて、導入・継続に関する新たな手続きルールが導入されます。

③運送業ドライバーの労働時間規制変更(労働基準法・改善基準告示)

バス・タクシー・トラックなどの運送業ドライバーについて、労働時間に関する規制が厳格化されます。

④建設業の労働時間規制変更(労働基準法)

工作物の建設の事業に従事する労働者について、労働時間に関する規制が厳格化されます。

なお、建設業の2024年問題の詳細は以下の記事で詳しく解説しています。

▶︎【2024年問題】建設業の勤怠管理の実態!調査で課題が明らかに|【2024年問題】建設業の勤怠管理の実態!調査で課題が明らかに | 施工管理・業務管理システムなら【アイピア】

⑤医師の労働時間規制変更(労働基準法)

主に勤務医について、労働時間に関する規制が厳格化されます。

⑥鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業の労働時間規制変更(労働基準法)

鹿児島県および沖縄県で砂糖製造業(サトウキビ栽培など)に従事する労働者について、労働時間に関する規制が厳格化されます。

さらに2024年10月1日には、厚生年金および健康保険に関して以下の法改正が施行されます。

2024年10月1日施行|人事・労務関連の法改正

⑦厚生年金・健康保険の適用範囲拡大(厚生年金保険法・健康保険法)

短時間労働者を除く被保険者の総数が常時51人以上である事業所においては、パート・アルバイトなどの短時間労働者を厚生年金保険・健康保険に加入させる義務を負います。なお、改正前は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時101人以上である事業所が対象です。

契約・文書関連の法改正の概要

契約・文書に関しては、1月1日に電子帳簿保存に関する法改正が施行されました。

2024年1月1日施行|契約・文書関連の法改正

①電子取引データの電子保存の完全義務化(電子帳簿保存法)

電子取引によって授受した請求書や領収書などの取引データにつき、印刷せずにデータのまま保存することが完全義務化されました。

また、2024年11月までに以下の法改正が予定されています。

2024年11月までに施行|契約・文書関連の法改正

②フリーランスの保護に関する各種規制の新設(フリーランス保護新法)

フリーランスを保護するため、発注側の事業者に契約事項の明示、取引条件の適正化、出産・育児等への配慮、ハラスメントの防止などが義務付けられます。

③不当表示に関する確約手続きの導入・刑事罰化・課徴金制度の見直し等(景品表示法)

消費者庁から不当表示の指摘を受けた場合に、是正措置計画の認定を受けることで措置命令や課徴金納付命令を回避できる制度(=確約手続き)が導入されます。また、優良誤認表示および有利誤認表示については直ちに刑事罰の対象となるほか、課徴金制度についての見直しも行われます。

知的財産関連の法改正の概要

知的財産に関する法改正では、2024年1月1日に改正意匠法が一部施行されたほか、同年4月1日に意匠法・商標法・不正競争防止法の改正法施行が予定されています。いずれの改正についても、知的財産権の保護を強化する方向の変更が行われているのが特徴的です。

2024年1月1日施行|知的財産関連の法改正

①新規性喪失の例外規定の要件緩和(意匠法)

2024年4月1日施行|知的財産関連の法改正

②送達制度の見直し、書面手続きのデジタル化、裁定制度の閲覧制限の導入(意匠法)

③登録可能な商標の拡充・登録手続きの要件緩和等(商標法)

④ブランド・デザイン・営業秘密・限定提供データの保護強化等(不正競争防止法)

訴訟関連の法改正の概要

2024年3月1日より、裁判所の公開法廷で行われる口頭弁論手続きをオンラインで実施できるようになります。口頭弁論のオンライン実施により、遠方からでも訴訟に参加しやすくなる点や、準備時間を確保しやすくなることによる審理の充実化などが期待されています。

なお、民事訴訟のIT化(裁判IT化)については、今後も抜本的な法改正が予定されており、2026年5月までに全面施行される予定です。詳しくは『裁判IT化で何が変わるのか?変更点やメリット、現状の問題点を解説』をご覧ください。

まとめ

法改正への迅速な対応は、企業の法務担当者にとって重要な役割の1つです。毎年変化する法改正に、自社のオペレーションをタイムリーに対応させることは、コンプライアンスの観点からも必要不可欠といえます。2024年にも、人事・労務に関するものをはじめとして、重要な法改正が多数予定されています。最新の情報を収集し活用しながら、適切な対応に努めることをおすすめします。

おすすめ記事:法務機能を高度化!リーガルオペレーションズの最新動向と重要性とは

阿部 由羅
阿部 由羅ゆら総合法律事務所・代表弁護士

ゆら総合法律事務所・代表弁護士(埼玉弁護士会所属)。1990年11月1日生、東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。弁護士登録後、西村あさひ法律事務所入所。不動産ファイナンス(流動化・REITなど)・証券化取引・金融規制等のファイナンス関連業務を専門的に取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・その他一般企業法務への対応多数。同事務所退職後、外資系金融機関法務部にて、プライベートバンキング・キャピタルマーケット・ファンド・デリバティブ取引などについてリーガル面からのサポートを担当した。2020年11月より現職。一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。弁護士業務と並行して、法律に関する解説記事を各種メディアに寄稿中。

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