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中小企業でも高まるBCPの重要性

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新型コロナウイルスの影響により、特に中小企業では事業の継続が困難となるケースも多く、BCPの重要性に改めて注目が集まっています。しかし一方で、中小企業においてはBCPの策定率が低いとの調査結果も出ています。今回は、中小企業におけるBCPの現状と必要性を解説するとともに、BCPの策定支援事業についてご紹介します。

    • 中小企業をめぐるBCPの現状
    • 中小企業がBCPを策定する方法
      • 中小企業が利用できる行政のリソース
        • まとめ

        目次

        ja-JP

        新型コロナウイルスの感染拡大により、特に中小企業は事業の継続が困難になる等、大きな影響を受けており、BCP(事業継続計画)に改めて注目が集まっています。しかしながら、調査結果によると中小企業においてはBCPの策定率が低いとの結果も出ています。

        そこで今回は、中小企業におけるBCPの現状と必要性を解説するとともに、中小企業が利用できるBCPの策定支援事業についてご紹介します。

        中小企業をめぐるBCPの現状

        新型コロナウイルスの影響により、中小企業を中心に企業倒産数が増加しています。一方で中小企業のBCP策定率はなかなか上がっておらず、倒産やビジネスの停滞を最小限にとどめるBCPの重要性は増していると言えます。

        新型コロナウイルスの影響で企業倒産が増加

        新型コロナウイルスの感染拡大は、企業活動に多大な影響を与えました。店舗・工場やオフィスの閉鎖、在宅勤務を中心とした業務スタイルの再構築、感染予防のための消毒グッズ・間仕切りの準備など、ビジネスの路線変更や縮小、停止などを余儀なくされたのです。

        実際に、新型コロナウイルス関連倒産も増加傾向にあり、帝国データバンクの「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査によると、2021年1月8日時点で累計875件発生しています。特に、人が集まることを前提としたビジネスである飲食店、ホテル・旅館といった業種の倒産が目立つ状況です。

        実は、飲食業や宿泊業のBCP策定率は業種の中で非常に低いという調査結果が存在します。内閣府が2017年に調査したところによると、宿泊業・飲食サービス業のBCP策定率は15.0%にとどまっており、電気・ガス・熱供給業・水道業といったインフラ系の業種(67.3%)に比べてその低さは際立っています。

        必ずしもBCP未策定だったから倒産したとは言えませんが、新型コロナウイルスで最も影響を受けた業種はBCP策定率も低いという結果は、緊急時におけるBCPの重要性を示唆するものと言えるかもしれません。

        中小企業のうち9割近くがBCP未策定

        新型コロナウイルス関連倒産を余儀なくされたのは、ほとんどが中小企業および個人事業主となっています。負債額100億円以上の大型倒産はたったの4件であり、中小企業の方が圧倒的に大きな影響を受けていることがうかがえます。

        しかしながら、BCPの必要性がより切迫しているはずの中小企業におけるBCP策定率は、大企業に比べて高くありません。帝国データバンクの2020年5月時点における事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査によると、BCPの策定率は大企業で30.8%であるのに対し、中小企業で13.6%、小規模企業で7.9%と低い水準にとどまっています。

        一部自治体ではBCP策定に助成金

        リソースに限りのある中小企業では、BCPの策定に人員や時間、費用を割くことがどうしても難しいというのは理由の一つにあるかもしれません。

        そこで利用したいのが、自治体の助成金です。一部の自治体では、BCPの策定促進のために助成を設けています。たとえば、東京都では東京都中小企業振興公社が「BCP実践促進助成金」と題して、BCP実践のための設備等の導入に要する経費の一部を助成してくれます。

        あくまで自治体単位での助成にはなりますが、こうした制度がないか一度調べてみるといいでしょう。後ほど、他の自治体の支援事業についてもご紹介します。

        中小企業がBCPを策定する方法

        カフェでテレワークする女性

        BCPを策定すると言っても、どのように検討を進めればよいのか分からない企業も多いことでしょう。ここでは、中小企業庁のガイドラインに沿って簡単に策定と運用の方法をご説明します。詳細については、「事業継続計画(BCP)とは?基礎知識と策定方法」もあわせてご参照ください。

        BCPの目的と対象商品を決定

        まず、BCPの策定目的を明確にするとともに、最も守るべき対象商品を選定します。

        ここでの策定目的とは、「人命(従業員・顧客)の安全を守る」「自社の経営を維持する」など、BCPの意義にもつながるものです。経営方針の延長線上として、経営者が検討する必要があります。

        対象商品とは、緊急時に限りあるリソースで優先的に製造・販売を維持すべき商品やサービスを指します。提供が停止した場合に、自社や顧客に最も影響を与えると考えられるものがこれに当たります。

        たとえば、ある下町の商店街にある中華料理店がBCPを策定するケースを考えてみましょう。この場合、目的として「人命を守る」「営業を継続する」などはもちろん、「商店街の活気を維持する」もあり得ます。また、対象商品は「中華料理店におけるお客様への飲食サービス」となるでしょう。

        現状の対策およびトラブル発生時のリスクを評価

        現状でBCPと同じような対策があるのか、あるとしたらどのようなものかを洗い出します。また、いくつか考え得る緊急事態(大地震や大雪等の自然災害感染症拡大など)をピックアップし、インフラおよび自社への影響を検討します。この際、人・情報・モノ・金の4種類に分けると考えやすくなります。

        上述の中華料理店で、大地震が発生した際のリスクを考えてみましょう。以下は一例となります。

        • 人:負傷や交通機関の麻痺により、従業員が出社できない

        • 情報:パソコン・サーバーの破損、帳簿の焼失により機密情報が失われる

        • モノ:調理道具・食器等が破損。また物流の停止によって材料の調達ができなくなる

        • 金:営業停止に伴い売上低下。破損した建物や物品の復旧に資金を要する

        新型コロナウイルスのような感染症拡大の場合、上の例とは異なり情報・モノの破損がない代わりに長期的な営業停止・縮小のリスクが考えられます。緊急事態ごとにリスクを洗い出す必要があります。

        発生する可能性のあるリスクと、それに対する現状の対策とを照合すると、新たに対策を追加すべき箇所がギャップとして見えてくるはずです。

        リスクに応じたBCPの検討

        前項で見出されたギャップに基づき、リスクの高い部分から優先的にBCPを検討していきます。特にバックオフィス業務については後回しにされやすいのですが、重要な情報・データを管理しているためにデジタル化を中心とした対策が急務となります。

        中華料理店における大地震を例に考えますと、データの喪失を防ぐためにバックアップを行うこと、そして紙ベースの情報(帳簿、予約台帳、各種契約書等)をデジタル化することが想定される対応の一つとなります。

        BCPの社内教育と見直し

        BCPを策定したら、社内への周知と見直しタイミングの検討が必要です。従業員がBCPの内容に沿って動けなければ意味がありませんし、組織変更や在庫管理の変更などの後にBCPを更新できなければ、いずれ古びて会社の現状に即さなくなってしまうためです。

        社内教育については、会社の組織構成や教育体系などを踏まえた形で、定期的に取り組み状況や役割分担、進捗状況、問題点などを話し合う機会を設けるとよいでしょう。また見直しタイミングについては、どんな時に見直しをかけるのかの基準をあらかじめ決めるようにしましょう。

        中華料理店の例ですと、アルバイトを含めた従業員への周知が欠かせません。アルバイトの出入りが頻繁に発生するため、周知のタイミングを3ヵ月ごとと高めの頻度で設定するのがよさそうです。また原材料調達先の変更や従業員の出入りがあった際、見直しを行うかどうか検討することもBCPの運用方針として組み込むことが考えられます。

        中小企業が利用できる行政のリソース

        行政のBCP策定支援

        中小企業庁を中心とした省庁や自治体が、BCP策定に際して参考にできる資料がたくさん存在します。ここでは、まず読むべき中小企業庁の策定運用方針、自治体によるガイドライン、各省庁や自治体などによる企業事例集の3種類を紹介します。

        理解は必須!中小企業庁による策定運用方針

        中小企業庁では、2006年に「中小企業BCP策定運用指針」を公表して中小企業へのBCP普及促進に努めてきました。しかしながら、その後もBCPが浸透していなかったこと、そして何より東日本大震災の発生を受けて、2012年にはより分かりやすい内容にすべく第2版へ全面改訂を行い、中小企業のリスク管理経営改善につなげようとしています。

        こちらのガイドラインは、単なる読み物ではなく記入式になっており、順を追って進めていくと事業継続計画書を完成させられるようになっています。入門コース・基本コース・中級コース・上級コースと分かれており、初めてBCPを策定する経営者からBCP策定済みの企業まで幅広く利用できます。

        まずはこちらのガイドラインを参照し、必要なBCPを検討・策定するとよいでしょう。

        自治体によるBCP策定支援事業

        先にご紹介した東京都のように、自治体がBCP策定支援を行っているケースがあります。助成制度、専門家の派遣、セミナーの開催、BCPフォーマットの作成など、自治体によって異なりますが様々な支援が用意されていますので、これらの支援事業を利用するのがおすすめです。

        大阪府では、BCPを策定する人手や時間が足りない方向けに、A3サイズの用紙1枚で完結できる「超簡易版BCP『これだけは!』シート」を提供しています。他にも、各地の商工会議所でセミナーを定期的に実施しています。

        東京や大阪などの大都市以外でも、BCP支援は実施されています。たとえば、静岡県でもBCPの研究会、セミナー、モデルプラン、災害防止対策資金など、BCPに関連した各種支援が存在しています。自社のある自治体のホームページをチェックしたり担当者に問い合わせたりして、支援内容を確認してみましょう。(参考:公益財団法人東京都中小企業振興公社 BCP策定支援事業 ~事業継続計画の策定をサポートします!〜 | 静岡県 静岡県のBCP(事業継続計画)に対する各種支援について

        行政のまとめたBCP策定事例集

        同業種の他社ではどんなBCPを策定しているのか、既存事例として知っておきたい人もいるでしょう。中小企業庁や内閣府、各自治体が事例集をまとめているので、チェックすることをおすすめします。

        こうした事例から、策定手順や内容だけではなく、策定に際しての注意点などを読み取ることができます。自社のBCP策定の参考になるでしょう。

        まとめ

        BCPは、中小企業「でも」必要なのではなく、中小企業「だからこそ」必要なものです。新型コロナウイルスのような感染症のパンデミックも、東日本大震災などの自然災害も、いつ襲ってくるのか予期できません。平時からこうした事態に備えてBCPを策定・運用することで、倒産やビジネスの停止などの問題を回避しやすくなります。

        ご紹介した支援事業・資料などを参考に、できるだけ早急にBCPの策定検討を始めましょう。

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