ドキュサインとハンコの関係① 日本進出への道のり
Docusign が日本に進出するにあたり、注目したのが印鑑を使った日本ならではの契約スタイル。ハンコ文化を尊重しながらどのように「紙」を使った契約書のデジタル化を推進していくことができるのか、ドキュサイン・ジャパン設立までの経緯とその裏話についてお話します。
ドキュサインとハンコの関係?外資系企業なのに何故ハンコ?と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はドキュサインが日本に進出するにあたり、注目したのが印鑑を使った日本ならではの契約スタイルでした。
本ブログを含め3回にわたり、日本でのサービス展開前から現在まで続く「ドキュサインとハンコの関係」についてお話ししたいと思います。
第1回目は「ドキュサインが日本に進出するに至るまでの経緯」です。
米国に本社を構えるドキュサインは、2014年に日本進出を検討し始めました。同年春にドキュサインの幹部が日本を視察した際、日本で利用されている紙での契約や、中小から大企業まで多くの企業がFaxを利用しているのを目にして日本のマーケットポテンシャルを感じたといいます。日本は自動車などに代表される製造業での生産性は世界最高水準であるが、オフィスでの業務においては改善の余地がまだまだ秘められていると。
ドキュサイン創業者のトム・ゴンザーは、不動産業界で発生する紙を使った契約書の莫大な量、そして何度も名前や住所など同じ情報を書き、署名を求められることに疑問を感じていました。トムは不動産エージェントと対面で契約を取り交わさず、何時でも、何処からでも、モバイルデバイスで署名できないかと考え、2003年にドキュサインを創業しました。現在、米国では電子署名が広く普及し、書面での不動産売買契約を嫌う売主や買主が増え、電子化の波に乗り遅れている不動産屋は断られてしまうという話もあるくらいです。
話をドキュサインの日本マーケット進出に戻すと、創業者のトムが日本に来日した際、日本企業の契約業務を目にして驚いたといいます。それは、契約書を2部印刷し、製本された契約書に割り印、役所に登録された印鑑証明書を持参の上、契約書2部に捺印、というものです。その時、トムは昔から続いている印鑑を用いた日本の契約セレモニー、そして改ざん防止の方法に関心を持ちました。さらに、欧米にはない契約書に対するプロセスの重みを感じたといいます。日本でドキュサインを普及させるには、日本ではあまり浸透していない署名ではなく、昔ながら日本人に馴染みのある印鑑を取り入れることが大事であると。
実際、米国でドキュサインが普及したのは、電子で届いた契約書の署名箇所に紙の契約と同じように電子的な「付箋タグ(フィールド)」がつけられるようになってからです。日本でもアメリカでも国や地域にかかわらず、新しいテクノロジーを導入するには慣れ親しんだ見た目は大切です。電子署名を取り入れた日本企業が、突然日本の契約書にサインするのではなく、甲、乙の欄に記名、捺印がある方がしっくりきますし、契約を締結したという安心感もあるのではないでしょうか。
※付箋イメージ
こうして、2015 年 11 月、日本法人としてドキュサイン・ジャパンを設立すると同時に、シヤチハタ社との業務提携を発表し、日本での本格的なサービス展開を開始しました。
日本ではまだまだ電子契約や電子署名に対するハードルが高く感じられますが、ドキュサイン前CEOのキース・クラックは来日する度に、日本が業務効率化を進めるにはまず紙を電子化することが必要不可欠だと説いていました。ビッグデータやAIを使った分析をするにも、まずは紙を無くし、データのデジタル化が必要です。そして、文書の情報をデジタル化することにより、システム間でデータの連携が取れ、業務の自動化が可能となります。プロセスを自動化することにより、社員は場所に捕らわれず仕事ができ、会社全体の生産性向上もつながります。また、今まで当たり前のように行ってきた紙を使った事務作業をデジタル化、そして自動化することにより、より高付加価値な作業に時間を割くことができ、残業代の削減にもつながります。
新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークが進む中、紙の書類やハンコのために出社を余儀なくされているという話もよく聞かれます。今あるハンコ文化を尊重しながらデジタルに移行していくことで、この状況をうまく乗り越えていくことができるのではないでしょうか。
次回は、ドキュサインが「なぜシヤチハタ社とパートナーシップを組んだのか」についてお話します。