2022年4月から対象拡大!改正女性活躍推進法のポイントを解説
2020年より段階的に施行されている改正女性活躍推進法ですが、2022年(令和4年)4月からは一般事業主行動計画の策定義務の対象が拡大されます。本記事では、女性活躍推進法の概要や改正法のポイント、企業が女性活躍推進の取り組みをどのように進めるべきかわかりやすく解説します。
2019年に成立し、2020年より段階的に施行されている改正女性活躍推進法。2022年4月からも一部内容が施行されますが、改正女性活躍推進法は企業活動にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本記事では、女性活躍推進法の趣旨や意義を解説し、改正女性活躍推進法の成立背景や改正のポイント、企業が取るべき対応について紹介します。
女性活躍推進法 ― その趣旨や意義とは?
2015年に成立・施行された女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、「女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力のある社会の実現」を目指し、国や自治体、企業に努力を促すことを目的に制定されました(※1)。
女性活躍推進法の成立背景には、国が掲げる「男女共同参画社会の実現」の方針があります。日本は、社会の指導的地位や管理職に占める女性の割合が、国際的に見て低水準であり、社会における女性の地位が相対的に低い傾向にあります。その是正に向け、国は1999年の「男女共同参画社会基本法」の施行、2015年の「第4次男女共同参画基本計画」の閣議決定などを通じて、人権や社会制度、職業生活など、社会生活全般において男女が平等に位置付けられる「男女共同参画社会」の実現を目指してきました(※2)。女性活躍推進法は、そのなかでも女性の「職業生活における活躍」に焦点を絞り、国、自治体、企業に、女性に対する積極的な採用・昇進などの機会提供や、職場における性別による役割分担などへの配慮が求められています。
また、同法では「一般事業主行動計画」という、企業が女性活躍推進のために取り組むべき施策が示されています。常時雇用する従業員が301人以上の大企業では「義務」として、300人以下の中小企業では「努力義務」として、以下の取り組みが求められます。
女性の活躍に関する状況把握、課題分析
数値目標のある行動計画(一般事業主行動計画)の策定、届け出、周知、公表
女性活躍に関する情報の公表
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改正女性活躍推進法のポイントは?2022年4月から施行される内容も解説
改正女性活躍促進法は2020年から段階的に施行されていますが、どのような変更が行われているのでしょうか。主な改正のポイントは以下の3つです。
女性活躍に関する情報公表の強化(2020年6月1日施行)
2020年4月より、従業員301人以上の大企業に対して、一般事業主行動計画の策定方法や情報公表の方法が変更されています(※3)。
具体的には、301人以上の大企業は、原則として「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の2つの区分から、それぞれ1つ以上の項目を選択し、関連する数値目標を定めた行動計画を策定しなければなりません。
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
採用した労働者に占める女性労働者の割合
男女別の採用における競争倍率
労働者に占める女性労働者の割合…等
②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
男女の平均継続勤務年数の差
10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用の割合
男女別の育児休業取得率及び平均取得期間…等
また、2020年6月1日以降は、女性の活躍に関する情報公表について、上の2つの区分からそれぞれ1項目を選択して、2項目以上を公表する必要があります。
特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設(2020年6月1日施行)
従来、女性活躍推進の取り組みが優良な企業に対して与えられていた「えるぼし認定」に、さらに水準の高い「プラチナえるぼし認定」が創設され、現在、合計4つの認定段階に分けられています(※4)。えるぼし認定やプラチナえるぼし認定は、厚生労働大臣が定める認定マークであり、自社商品や広告に掲示することができます。これにより、自社が女性活躍推進企業であることのPRが可能です。
一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大(2022年4月1日施行)
2022年4月からは、従業員101人以上300人以下の中小企業に、一般事業主行動計画を策定・届出する義務が付与されます。従来、努力義務だった取り組みが義務化される形です。
また、これに合わせて、女性の活躍に関する情報公表も義務化されます。前述の「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の2つの区分からそれぞれ1項目以上を選択し、求職者が閲覧できるよう情報公表する必要があります。
改正女性活躍推進法に企業はどう対応するべき?
改正女性活躍推進法では、企業に対する義務が拡大・強化されていますが、その義務を怠ったことによる罰則はありません。しかし、各企業が策定した一般事業主行動計画の内容は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」で公表されます(※5)。自社の優良な就業環境を社会に向けて発信し、優秀な人材を獲得するためにも、女性活躍推進は重要な施策といえるでしょう。
では、企業は具体的にどのような施策に取り組むべきでしょうか。例えば、改正女性活躍推進法において数値目標の策定が求められている一般事業主行動計画の把握項目のなかには、「男女のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績」が定められています(※6)。
柔軟な働き方が広がると、出産や育児を理由にした離職を抑止することができ、家庭生活と職業生活の両立も実現しやすくなるため、女性の活躍をより促すことができるでしょう。その意味で、フレックスタイム制、在宅勤務、テレワークなどの導入は有効な施策といえます。
そして、こうした自由な働き方を実現するためには、社内のデジタル化がカギとなります。特に、テレワークを実現するためには、コミュニケーションツールや、ワークフローシステム、電子署名ソリューション、人事管理システムなどを活用し、場所や時間にとらわれず働ける環境の構築が必要不可欠です。
また、柔軟な働き方を実現するためには、社内制度や労務管理の整備も欠かせません。自由な時間での勤務やオフィス以外での就労にも対応できるよう、就業規則や勤務時間管理を見直す必要もあります。
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このように、女性活躍推進を目指す企業は、一般事業主行動計画の把握項目を掘り下げながら、環境整備を進めるのがよいでしょう。そのほかにも、一般事業主行動計画の把握項目には「男女別の育児休業取得率及び平均取得期間」や「男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績」などが定められています。これらの数値を向上させるにはどのような施策が必要かを見極め、実践していく ー それが女性が活躍しやすい環境をつくるうえでの第一歩なのではないでしょうか。
参考: