2022年4月施行!改正地球温暖化対策推進法のポイントを解説
2022年(令和4年)4月に施行される改正地球温暖化対策推進法(改正温対法)。本改正法は温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指していますが、具体的にどのような改正が図られるのでしょうか。本記事では、改正ポイントや成立の背景、企業に求められる対応をわかりやすく解説します。
温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルの実現を目指す「改正地球温暖化対策推進法」(改正温対法)が2022年4月に施行されます。昨今、全世界的な課題となっている気候変動問題などに対応するため、日本でも「脱炭素社会」実現に向けた取り組みが活発化していく見込みです。
本記事では、改正地球温暖化推進法のポイントや改正の意義、また企業にどのような対応が求められるのかなどについて解説していきます。
改正温対法が実現を目指す「カーボンニュートラル」
地球温暖化対策推進法は、1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で気候変動枠組条約に関する議定書(京都議定書)が採択されたことを受けて1998年に成立したもので、地球温暖化対策の推進を目的としています。これまで6回の改正が行われており、2021年5月に7度目の改正案が成立しました(※1)。
今回の改正は、2020年に菅義偉 元首相が温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言したことを背景としています(※2)。カーボンニュートラルとは、CO2やメタンなどの排出量を、森林吸収や排出量取引などで吸収される量と均衡させることで、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする取り組みです。
菅首相は、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言したほか、2030年度には温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%減するという中期目標を打ち出しています。改正温対法は、こうした政府の方針を実現し、「脱炭素社会」の実現を目的に成立しました。
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改正温対法の3つの改正ポイント
では、具体的にどのような改正が図られるのでしょうか。改正温対法の主なポイントは以下の3つです(※3)。
1. 地球温暖化対策の基本理念新設
まず、1つ目のポイントは、「2050年までのカーボンニュートラルの実現」を基本理念として法律に明記したことです。さらに、条文には「我が国における2050年までの脱炭素社会の実現を旨として、国民・国・地方公共団体・事業者・民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならないものとする」と記し、全国民がカーボンニュートラルの「関係者」であると規定しています。こうした基本理念を設けることにより、あらゆる国民や企業に国の政策の継続性や予見可能性を示し、地球温暖化対策や、それを促すイノベーションの加速を図っています。
2. 地域の脱炭素化の促進
2つ目のポイントは、地域における脱炭素化を促すため、地方公共団体における再生可能エネルギーの利用促進などに実施目標の設定を求めたことです。カーボンニュートラルを実現するためには、地域における再生可能エネルギーの利用が重要になります。そのため、従来の法律では、地方公共団体に再生可能エネルギーの利用促進などを求める実行計画制度を定めていました。しかし、実行計画制度には実施目標の設定が定められていないため、地域における脱炭素化がなかなか進まない状況にあります。そこで、今回の改正では、都道府県・政令市・中核市の実行計画に、実施目標の追加を定め、再生可能エネルギー利用促進などの実効性向上を図っています。
3. 企業の脱炭素化の促進
3つ目のポイントは、企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化です。従来、温室効果ガスを多量に排出する企業には、毎年度の排出量の報告が義務付けられており、その情報は企業単位で公表されていました。しかし、その報告の多くは紙媒体中心で行われていたため、報告から公表までに約2年を要し、排出量情報の活用促進の弊害になりつつありました。そこで、改正温対法では、企業の温室効果ガス排出量報告を原則デジタル化し、排出量情報の公表にかかる時間の短縮を図ります。さらに、従来は開示請求手続きが必要だった事業所単位での排出量情報を、手続きなしでも閲覧可能とし、企業における脱炭素化の取り組みをより透明性高く可視化しています。これにより、国内外の企業や投資家などに向けて、温室効果ガスの排出量情報の活用を促し、国内における脱炭素経営の促進やESG投資の呼び込みを加速させる構えです。
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企業がカーボンニュートラル・脱炭素経営を推進するには?
改正温対法の施行後、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。まず、温室効果ガスの排出量情報の報告が義務付けられている企業には、脱炭素経営へのシフトチェンジが求められることでしょう。現在、脱炭素化をはじめとした企業の環境保全活動は、CSR部門が担当するのが一般的です。しかし、環境省が企業の脱炭素経営の指針を示した「脱炭素経営推進ハンドブック」では、脱炭素化の取り組みは、今や「企業価値」「事業売上」「資金調達」にも大きな影響を及ぼすため、経営戦略として位置付ける必要があるとしています(※4)。そのため、交通・輸送手段の効率化や低炭素エネルギー資源の利用、低炭素商品・サービスの開発など、各社が適切な脱炭素経営を実践していくことが重要です。
また、排出量の報告が義務付けられていない中小企業にとっても、脱炭素経営は無関係ではありません。環境省のハンドブックも「中小企業にとっても、温室効果ガス削減の取組が光熱費・燃料費削減という経営上の『守り』の要素だけでなく、売上の拡大や金融機関からの融資獲得といった本業上のメリットを得られるという『攻め』の要素を持ちつつある」としており (※5)、脱炭素経営が中小企業にもたらすメリットを強調しています。
そのため、事業で多量の温室効果ガスを排出しない中小企業においても、高効率の照明・空調機器の利用や、ペーパーレス化による紙の使用量の削減などを通じて、省エネルギーに取り組むことも、脱炭素経営につながる第一歩になり得るでしょう。例えば、ドキュサインの電子署名ソリューション「Docusign eSignature」を利用して紙の文書をデジタルに移行することで、自社のペーパーレス化を実現できるほか、紙の削減を通じた森林保護や環境保全に寄与することもできます。
改正温対法の基本理念にも記されているように、カーボンニュートラルは、私たち一人ひとりが関係者としての自覚を持ち、推進していかなければならない取り組みです。この機会に、自らが「カーボンニュートラルのためにできること」について考えてみてはいかがでしょうか。
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参考:
※4 環境省 TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド ver3.0~(2021年3月)
※5 環境省 中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック(2021年3月)
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