紙と印鑑の文化をドキュサインで改革した三越伊勢丹プロパティ・デザイン
1673年創業の越後屋を起源にもつ三越と、1886年創業の伊勢屋丹治呉服店を起源にもつ伊勢丹が2008年に合併して生まれた三越伊勢丹ホールディングスは、「世界随一の小売サービス業グループ」をめざしていくことをビジョンに掲げています。数百年継続している企業には、其々、企業文化を育んだ建物管理業務にも独自の文化があります。それを統合しながら三越伊勢丹グループの全建物管理を担っているのが三越伊勢丹プロパティ・デザインのビルマネジメント事業部です。国指定重要文化財である三越日本橋本店など歴史のある建物の維持や、日々変化する百貨店オペレーションの変更依頼に迅速かつ安全に対応しています。
しかし、歴史があるがために、何をするにも紙による依頼および承認(の印)として印鑑が必要で、1日あたり100枚以上の依頼書を管理しています。そこで同所属のシステムネットワーク担当は、店内ネットワーク変更依頼の効率化を進めるためにドキュサインの電子署名を導入しました。
紙と印鑑の文化をドキュサインで改革
三越伊勢丹グループは、百貨店及びサテライト店・物流拠点など全国に50を超える拠点を持っています。これらの拠点が、バレンタイン、お中元、お歳暮、クリスマス、雛祭り、五月人形、振袖、日本各地の物産展などの催事ごとレイアウトを変更します。レイアウトを変更する度に、ネットワークを引いたり POS を入れたりと、様々なネットワーク工事が必要になります。従来までは従業員が工事の依頼書を紙で用意し、工事を取り仕切るビルマネジメント事業部に Fax で送信したり、社内便で送付していた為、双方とも膨大な紙の処理に追われていました。
「百貨店では、大きなものから小さなものまで年間で1店舗当たり50~100の催事を行っています。その度に全国の拠点から受け取る膨大な紙の依頼書の処理に追われ、非効率さを感じていました。これを何とかできないか、と常に試行錯誤していました」と同社ビルマネジメント事業部管理部システムネットワーク担当長である若宮茂徳氏は話します。
もともと三越伊勢丹はペーパー文化が強く「電子メールはあるが、決裁は紙による捺印のみ」という業務フローでした。紙を PDF にして、メールに添付して送り、受け取った人は PDF をプリントアウトして、承認・決裁者の元まで持って行き、またスキャンして次の人にメールで送信、また印鑑を押してもらう、という流れです。
若宮氏は、「紙のため、工事依頼者もリアルタイムに進捗がわからず、また紛失の恐れもあり、このプロセスをエンドツーエンドで電子化・自動化したいと考えました。しかし、古くからある文化を全て変える訳ではありません。日本古来の印鑑文化を継承しながら、変える箇所は変えていく - これにはドキュサインしかありませんでした。育まれてきた歴史と文化を尊重しつつ、最先端のツールで業務の効率化を図るためには、ドキュサインが必要でした」とドキュサイン導入の経緯を振り返ります。
10人を超える稟議でも状況をリアルタイムに追跡
ドキュサイン導入後のプロセスは:1) 施設依頼書と会場図面をスキャンして PDF 化し、メールに添付して送る、2) ビルマネジメント事業部は受け取った後、ドキュサインにて各部署から承認を得る、3) 全員の捺印が完了すると、自動的に工事がはじまる、というシンプルなものになりました。
「今までは紙の依頼書を何人もの承認者、時には 10人を超える承認者にファックスや社内便で回していたのですが、それだと現在何件の物件があり、どこまで済んでいるのか、進捗が全くわかりませんでした。ドキュサインだと物理的な紙を送る必要が無くなっただけでなく、各承認者ごとに捺印済か未済かなど、進捗も管理できるので便利ですね」。
「また、ドキュサインを選択した大きな理由のひとつが、クラウドベースであるということです。他のソリューションだと、独自の投資が必要になります。お金と構築する手間、維持する人間を考えると、クラウドベースですぐに使えるドキュサインがコストパフォーマンスに優れていました。またワークフローが柔軟に組めるので、承認者が多い稟議も苦労なくペーパーレス化できました」。
50数拠点あるうち、殆どの拠点においてすでにこのプロセスを取り入れている同社。「やり始めてから1年足らずでここまで進みました。これは、運用する人間も一緒になって、仕組みだけでなく、体制と運用ルールも整えたおかげです。依頼者が困るところをドキュサインはうまく巻き取っていて、現場が抱えている問題を解決してくれました」と若宮氏はプロジェクトの成功を語ります。
まずは使ってみて、利便性を理解してもらう
電子署名を導入する際、“署名する側が受け入れてくれるかどうか不安”という声もしばしば聞かれます。同社では、どのように対応したのでしょうか。「印鑑文化は残すも、いつでもどこでもデバイスを選ばないドキュサインの利用範囲を拡大して、利便性を理解してもらう方が良いと判断して進めました。パソコンやスマホでボタンを押すだけなので、誰でも簡単に使えます」と若宮氏は話します。
ドキュサインを導入して成功している企業の共通点として、1)不安な点があっても、まずは導入して使ってもらうこと(使えば必ず利便性を感じることができる)、2)要望に沿って迅速に軌道修正を行う(繰り返す)、3) 地道な啓蒙活動、の3点が挙げられます。新しいことをはじめれば、問題に直面するのはごく自然なことで、そこで躓いてはいつになっても新しいことはできません。
若宮氏はドキュサイン導入の効果について「効果としては、スピードも勿論ですが、封入やファイリングの手間がなくなったことと、それに伴い人件費・時間・保管スペースの効率化ができたことが大きいと思います」と説明し、「申請だけが一気通貫でもダメで、受け取った側のプロセスも自動化していなければなりません。申請から工事部門に依頼が流れ、工事が完了するまで、スムーズに自動化させることがポイントです」と業務プロセス改革成功の秘訣を語ります。
ドキュサインを導入したことで、承認者が多い稟議も楽に回せるようになりました。
若宮茂徳 氏ビルマネジメント事業部管理部システムネットワーク担当長, 株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザイン