放送局から広告代理店、アーティストまで。権利ビジネスの根幹となる契約業務をデジタル化
日本の音楽・アニメ業界を牽引するエイベックス株式会社は、2020年に向け自社を「第三創業期」と位置づけ、事業ドメインを「音楽」「アニメ」「デジタル」に集約し、「avex group 成長戦略 2020~未来志向型エンタテインメント企業へ~ 」のスローガンのもと全社的な改革を進めています。また、2017年12月には「コミュニケーション・コラボレーションが起きる」「働きがいのある」「エンタテインメント企業ならではの機能を備えている」の3つのコンセプトでデザイン・設計した新社屋をオープン。エイベックスならではのワークスマートやイノベーション、そしてエンタテインメントを中心とした新しいコミュニティに成長することを目指しています。
権利ビジネスの根幹となる契約書をペーパーレス化
新しいオフィスでは全従業員の座席がフリーアドレスとなり、以前から推進していた業務のペーパーレス化が加速しました。それに伴い、契約部門でも紙の削減が課題となりました。同社音楽管理グループで契約業務を統括するシニアスーパーバイザーの坂本祥一氏は、「紙による契約は煩雑なので簡素化したい、という考えは、昔から持っていました。エイベックスは、音楽、ライブ、マーチャンダイジング、アニメ、映像配信サービスなど多岐にわたるエンタテインメント事業を展開しており、契約はこれら権利ビジネスの根幹を成します。アーティストや、広告代理店、放送局をはじめとした様々な相手先との契約書は年間数千件を超え、かつ1 件の契約書に複数の関係者が関わることも少なくありません。これを効率化、デジタル化することは、予てからの課題でした」と語ります。
前述の通り、同社ではすでに社内業務のペーパーレス化は進んでおり、社内決裁や契約稟議などにはシステムが導入されていました。しかし、「ラストワンマイル、つまり契約の『締結』だけは、紙にプリントアウトして、押印して、郵送していました。ドキュサインを導入することで、エンドツーエンドでペーパーレス化することができました」と坂本氏は続けます。
実績、知名度、使い易さでドキュサインを採用
電子署名ソリューションを導入する際には様々な選択肢がありましたが、比較的迷わずにドキュサインを選択したという同社。「ドキュサインに決めた理由は比較的シンプルで、世界中の企業が使っている実績、知名度、そして利便性です」と、同社 IT システムグループのシニアスーパーバイザーである鄭康彦氏は話します。「加えてエイベックスでは海外のアーティスト、プロデューサー、メディア、エンタテインメント企業、グローバル IT サービスなどとの契約も多いので、世界中で使われているというのは大きな選定理由の1つになりました。欧米では電子署名の標準ツールがドキュサインなので、グローバルな契約もスムーズに進みます」と続けます。
実際の導入効果について、坂本氏は次のように述べます。「ペーパーレスには様々なメリットがありますが、契約書を発送する必要がなくなったことが非常に大きいです。例えば、多忙で常に移動しているアーティストの方々に印刷した契約書を郵送、もしくは手渡しして署名捺印してもらうのは、先方にも私たちにとっても非常に時間のかかる作業です。それがドキュサインだと、スマホで契約書を確認してタップしてもらうだけで署名捺印し契約が締結できるので、双方にとって大きなメリットがあります」。
電子署名で「紙」に関する様々な問題を解決
例えば、映画やアニメの製作は製作委員会を立ち上げて行うことが多く、プロジェクトによっては契約書の署名者が10人を超えることもあります。そうなると、予定を合わせ一度に集まって署名捺印してもらうことは難しく、一方、 1 人1 人署名捺印して次の人に郵送、となると途方もない時間がかかります。さらに修正があると最初からやり直しとなります。
「ドキュサインを使うことで、この悩みは解決されます。また多くの人に契約書を回覧するので、稀にですが、契約書を紛失してしまう場合もあります。契約金額が大きいと印紙代も高額になるので、契約書の紛失は大きなコスト増に繋がります。ドキュサインを利用した電子契約だと印紙が必要ないので、その面でも安心です。また、契約締結まで数週間、場合によっては1ヶ月を超える場合もありましたが、ドキュサインだと数日、早ければその日のうちに締結できるので、非常に助かっています」と坂本氏は導入の効果を語ります。
海外アーティストに関する至急案件の際もドキュサインが活躍しています。「急遽、海外アーティストのテレビやコンサート出演が決まり来日することになるケースも少なくはありません。この場合、非常に限られた時間内にビザの申請をしなくてはならず、その際に契約書を合わせて提出しなければなりません。従来は紙に印刷した契約書を国際郵便でやりとりしなければなりませんでしたが、ドキュサインだとオンラインで瞬時に契約できるので、とてもスムーズ且つ確実に入国のための手続きを開始できます」。
クラウドベースのドキュサインの電子署名は、契約書の「保管」という部分でもメリットがあります。日本では、契約書の原本が紙の場合、紙の契約書を保管する必要があります。紛失を防ぎ、過去の契約書の検索や文書の管理を容易にするため、外部の倉庫に契約書の管理を委託する企業もあります。しかし、ドキュサインを使って電子的に契約を行えば、銀行レベルのセキュリティを担保するドキュサインのクラウド上で管理することができ、保管の手間とコストを減らし、かつ簡単に過去の契約書を検索すること可能です。
問題はクラウドでなく、企業の運用ルールや文化
「署名してもらう相手企業がドキュサインのセキュリティに不安を持ったことが何回かありましたが、丁寧に説明することで、納得し安心してご利用いただいています。また先方のファイアーウォールがメールを弾く、ということもありましたが、これは先方にホワイトリストの設定さえしていただければ全く問題ありませんでした。つまり、問題は『電子署名』ではなく、先方の運用ルールや企業文化にあることがほとんどです。ドキュサインそのものに問題はありません」と鄭氏は話します。
「今後は、印税の報告書でドキュサインを活用したいと考えています。現在、紙で送っているものをドキュサインで送信すれば、相当の手間が省けるとともに、双方で安全性や内容の証拠性が担保された上でセキュアに管理することが可能になると思います」と坂本氏はさらなるデジタル化へのビジョンを語ります。
契約業務のデジタル化は、エイベックスのビジネス全体のスピードアップに繋がりました。
坂本祥一氏音楽グループ シニアスーパーバイザー, エイベックス株式会社