収入印紙に割印・消印が必要な理由とは?よくある失敗例や訂正方法も紹介
契約書や領収書など、印紙税法が定める「課税文書」に相当する文書には収入印紙を貼る必要がありますが、その時に忘れてならないのが割印(消印)です。本記事では、収入印紙に割印が必要な理由と、割印のよくある失敗例やうまく押せない時の訂正方法などを紹介します。
領収書や契約書などに貼り付ける収入印紙。文書と収入印紙をまたぐ形で割印をする必要がありますが、一体なぜなのでしょうか。もし収入印紙に割印がなかった場合はどうなるのでしょうか。
本記事では、収入印紙に割印が必要な理由と、割印のよくある失敗例や割印をうまく押せない時の訂正方法などを紹介していきます。
収入印紙とは?収入印紙の貼付を忘れた場合はどうなるのか?
収入印紙は、税金や手数料の徴収を目的として政府が発行している証票です。領収書や契約書、登記事項証明書(登記簿謄本)といった文書は売上や金銭のやりとりに関わるものも多く、それらは印紙税法上、課税文書として定義され印紙税が課税されます。
印紙税額は、文書の種類や記載されている金額によって、それぞれ定められています(詳しくは『一覧表でわかる!収入印紙の金額を文書の種類ごとに紹介』をご覧ください)。印紙税額に相当する金額の収入印紙を文書に貼り付け、これに割印をすることで印紙税を納付したことになります。
収入印紙を貼り付ける場所は、法律上の規定はありませんが、例えば、領収書は右下部分の貼り付け枠、契約書は左上に貼付するのが一般的です。契約の相手方がいる場合は、相手方と取り決めた箇所に貼るようにしましょう。
印紙税の納税義務は原則として課税文書の作成者になります。また、法人名義で作成された契約書の場合、納税義務者は法人になります。万が一、課税文書に収入印紙を貼らなかった場合、印紙税額の3倍(納付すべき印紙税額+その2倍に相当する金額)の過怠税(かたいぜい)が徴収されることになります。自主的に納付漏れを申請すれば、過怠税は印紙税額の1.1倍(納付すべき印紙税額+その10%に相当する金額)に軽減されます。
収入印紙の割印・消印の正しい押し方と位置
収入印紙には割印をする必要があります。収入印紙を貼っただけで割印がなければ「納税した」とは認められず、過怠税(かたいぜい)の対象となってしまうので注意が必要です。この割印は、印紙税法(法第8条第2項)では「消印」と呼ばれています。
割印によって収入印紙が使用済みであることを示すことができ、流用や再利用の防止に役立ちます。当事者が複数いる場合、割印を行うのは全員でも一人でも問題ありません。
収入印紙に割印をする際には、文書と収入印紙の彩紋(柄の部分)をまたぐ形で押印します。割印は、必ずしも契約に使用した印鑑である必要はありませんが、誰が割印を行ったのかが明確に分かるようにしましょう。また、自署でも可能ですが、その場合は氏名、会社名のどちらも認められます。
▼割印(消印)が有効になるケース
印鑑を使用(角印、日付印もOK)
浸透印(インクが内蔵してあるスタンプ式のハンコ)を使用
ボールペンで自署
▼割印(消印)が無効になるケース
消えるボールペンや鉛筆を使用
すでに使われた収入印紙を再利用
押印の代わりに「印」の記号を書く
二重線や斜線を引く
収入印紙に割印する際のよくある失敗例と訂正方法
収入印紙の割印は、印紙を貼り付けた文書との間に段差が生じるため、印影が欠けたり、かすれたりするなど、うまく押印できないことがあります。その場合は、同じ箇所に押し直すことは避け、空いている部分に再度押し直せば問題ありません。
収入印紙は少しでも破れたり、欠けたりした場合は、欠損となり使用できません。欠損したまま添付してしまうと偽造を疑われることもあるため注意が必要です。収入印紙が欠損した場合は、税務署に持参し交換してもらうようにします。収入印紙を貼り間違えてしまった場合は、郵便局や税務署に書類ごと持っていけば、5円の手数料を支払って新しいものと交換してもらえます。しかし、消印がすでに押されていたり、税金の納付にすでに使っていたりする場合は交換ができません。
「割印をしてしまったが、印紙を使用する必要がなかった」という場合は、印紙税過誤納確認申請書を所轄の税務署に提出することで還付を受けることができます。
なお、実際にあった悪質な事例として、水で消印を洗い流して、収入印紙を再利用したケースがあります。この場合、収入印紙を貼っていないと見なされ、過怠税の支払い対象になります。故意に行うと「私文書偽造罪」や「私文書変造罪」にあたる可能性があり、罰金では済まない懲役刑が課せられることもあります。
まとめ
契約書や領収書などの課税文書に収入印紙を貼る際は、必ず割印を押す必要があります。割印は、収入印紙の再利用を防ぎ、納税の事実を証明する役割があります。割印を忘れると、過怠税が課される可能性があるため注意しましょう。
なお、電子領収書や電子契約の場合は収入印紙は不要です。これは、原則として、印紙税は紙で作成された文書が対象になるためです。電子署名を使えば、印紙税を節約できるのはもちろん、契約書のやり取りを簡素化し、契約業務を効率化することができます。ぜひこの機会に電子署名の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考: 国税庁:印紙の消印の方法