シチズンデベロッパーとは?誰でも開発者になれる時代の到来でDXが加速

自宅でアプリを開発するシチズンデベロッパー

近年、IT部門以外の非技術系の従業員が、ノーコードまたはローコードのプラットフォームを駆使し、アプリケーション開発を行うことが増えています。このような人たちは「シチズンデベロッパー」と呼ばれ、日本のDXを加速させる鍵になると期待されています。本記事では、シチズンデベロッパーの基礎知識に触れながら、注目される背景やシチズンデベロッパーがもたらすメリット、具体的な成功事例などを紹介します。

シチズンデベロッパーとは?

「シチズンデベロッパー(Citizen Developer)」とは、ローコードまたはノーコードのプラットフォームを使用して、主に業務改善やビジネスの効率化を目的に、自らアプリケーション開発を行う事業部門の現場担当者のことです。日本語に訳すと「市民開発者」という意味になります。

従来、アプリケーション開発にはプログラミングなどの高度なスキルが必要なことが多く、IT技術を習得したエンジニアがソースコードを記述するのが一般的で、企業ではIT部門が主にその役割を果たしてきました。しかし、近年はコーディング不要で、GUIにおいて感覚的な操作のみでアプリケーション開発ができるさまざまなプラットフォームが登場しています。また、生成AIも急速に進化しており、プログラミング作業を自動化したりすることも可能です。それらの多くは専門的な知識を必要としないため、IT部門以外の従業員であっても操作することができます。例えば、営業担当者がExcelのマクロを使って業務を自動化したり、人事担当者が採用管理システムを開発したりするといったように、いわば誰でも開発者になれる時代が到来しています。

シチズンデベロッパーが注目される背景とは

シチズンデベロッパーが注目される背景には、企業におけるIT活用の加速やニーズの多様化によって、アプリケーション開発にスピード感が求められるようになったことが挙げられます。プログラミングやコーディングによる開発は、要望に対する素早い対応が難しいという課題がありました。また、運用の安定性を確保したり、バグを修正したりするのに時間がかかり、市場の変化に対応しにくいという実状もあります。

シチズンデベロッパーは、その取り組み方法によっては、従来よりも短い期間でアプリケーションを完成させることができます。わずか数週間でアプリケーションを開発した事例もあり、市場の反応を見ながら、短期間で設計、実装、テストを繰り返して開発を進めていく「アジャイル開発」を推進できます。シチズンデベロッパーが積極的に開発に携わることで、市場のニーズに対応する製品を、スピード感を持ってリリースできるようになります。

シチズンデベロッパーによって何が変わるのか?

シチズンデベロッパーの登場は、企業にさまざまな変化をもたらします。具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

アプリ開発の効率化・コスト削減を実現する

シチズンデベロッパーがアプリケーションを開発することで、業務効率化やコスト削減が期待できます。エンジニアが膨大なコードを一から記述する必要がないため、リリースまでの工数やコストを大幅に削減できるからです、また、IT部門に依存することなく迅速にアプリケーションを実現したり、ビジネス要件やフィードバックをもとに素早く修正に対応することも可能です。

新しいアイデアを生み出す創造性を高める

シチズンデベロッパーはエンジニアのように幅広い専門的なスキルや知識を持っていないものの、ビジネスの本質や現場の問題点などをよく理解しています。新しい視点やアイデアをもとに、これまでにないユニークなアプリケーションを開発できる可能性もあります。また普段はIT技術に携わることのない従業員の意見を反映できるようになり、現場目線のより便利なソリューションが生まれるきっかけにもなります。

IT人材の不足を補う

近年、日本ではIT需要の拡大や労働人口の減少などを受けて、IT人材が不足しています。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、今後、ますますIT人材の需要と供給の差が拡大し、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。ノーコード開発は、従来の開発方法に比べて技術の習得にかかる時間やコストが大幅に縮小されます。企業がシチズンデベロッパーの活動を推奨することは、IT人材不足を補うことにもつながります。開発の一部をシチズンデベロッパーが担うことで、エンジニアはITインフラの保守・運用といった重要性の高い業務に集中できるようになります。

シチズンデベロッパーによるアプリ開発事例

最近では、シチズンデベロッパーによるアプリケーション開発に力を入れる企業も増えてきています。以下、目に見える成果をあげた日本企業の事例を紹介します。

1. 進捗管理システムを開発して工期短縮を実現(建設会社)

総合建設会社Kは、内装工事を行う際、部屋ごとの進捗を手書きの表に記載して管理していました。しかし、記入漏れが発生したり、リアルタイムでの把握が難しかったりと、さまざまな課題を抱えていました。そこで事務系社員がノーコードのプラットフォームを用いてスマートフォンからリアルタイムで工事の完了報告ができる「内装工事進捗管理システム」を開発。担当者はいつでも進捗を確認でき、完了報告後には次の工程管理者に自動でメールを送付することが可能になり、1人あたりの作業量が増えると同時に、工期短縮を実現しました(※1)。

2. 感染症報告アプリでプロセスを効率化(消費財メーカー)

国内大手の消費財メーカーKは、社員の新型コロナウイルス感染状況を把握するために、自社でアプリケーションを開発。アプリを作ったのは、リスキリングでシチズンデベロッパーとなった元工場長の社員です。このアプリのおかげで従業員の(感染状況に関する)報告は瞬時にクラウドに共有され、看護師や人事担当によるフォローアップが行われるまでの時間が180分から40分に短縮。約14,000時間分の作業時間が減った計算になります(※2)。

このように、シチズンデベロッパーの活躍により、大きな成果をあげている企業は少なくありません。シチズンデベロッパーは今後、アプリケーションの開発を通じて、企業のDXを促進したりビジネス現場の課題を解決したりするなど、その存在感を高めていくでしょう。

 

出典:

Contributeur DocuSign
筆者
Docusign
公開