テレワーク最前線シリーズ5:テレワーク時代の先を考える - 注目のワーケーション
いま注目の働きながら遊べる「ワーケーション」とは?オフィスなど普段とは異なる環境で働くことで新しいアイデアが生まれたり、家族と休暇を楽しめるなど様々なメリットがあります。その一方で課題も。実際にワーケーションを導入している企業の例を参考にしながら、第4のテレワークにもなり得るワーケーションについて解説します。
皆さんはワーケーションという言葉を聞いたことはありますか?ワーケーションとは、個人が主体的に選択する、日常の仕事(Work)に非日常的な休暇(Vacation)の感覚を合わせた柔軟な働き方のことです。
日本では、まだまだ一般的に知られている言葉ではありませんが、働き方改革を先進的に進めている企業や観光の拡大を図りたい自治体、関連事業を拡大したい事業者など一部では大きな注目を集めています。
テレワーク最前線シリーズ第1回で説明したとおり、テレワークには、在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務の3つの形態がありますが、そこに4つめの形態として休暇を楽しみながら働くワーケーションも加わることになるかもしれません。
しかし、あくまで「普段の勤務先とは異なる環境で働くことでリフレッシュする」ことがポイント。旅行先で仕事ばかりしていたら本末転倒です。
今回は、ワーケーションについて詳しく見ていき、どうすれば有効なワーケーションが可能になるかを考えたいと思います。
環境省が推進し、先進企業が取り入れているワーケーションをご存じですか?
環境省管轄の令和2年度補正予算案に、国立・国定公園でワーケーションを推進するための整備費用が確保される、というニュースを見た方もいらっしゃるのではないでしょうか?
環境省の資料によれば、目的は「国立公園等や温泉地でワーケーションが可能であることを発信することで、国立公園等で遊び、働くという新たなライフスタイルを示す」ことです。背景として「キャンプ場が更に人気となっており、温泉地の旅館でもワーケーション推進の機運が高まっている」とあります。
まず34ある国立公園のキャンプ場で、続けて全国80カ所の国民保養温泉地の旅館等においてワーケーションを展開し、企画および実施費用の支援、PR費用支援、およびWi-Fi等の環境整備支援をするとしています。
この環境省の取り組みにより、地方自治体や宿泊施設、あるいはツアー会社や運送会社などがワーケーションを積極的に推進する動きが広がることでしょう。
日本企業でも既にワーケーションを取り入れている企業があります。日本航空は、働き方改革の一環として、2017年7月に発行したプレスリリースで下表の取り組みをすると発表しています。参考:日本航空プレスリリース「JALは、テレワークを推進し、働き方改革を進めます」(2017年7月)
参考:日本航空プレスリリース「JALは、テレワークを推進し、働き方改革を進めます」(2017年7月)
同社の取り組みから、ワーケーションの具体的なイメージが湧くのではないでしょうか?
ワーケーションが期待される理由とは?
ゴールデンウィークや長期休暇制度などで家族と旅行に出かけても、会社から携帯電話に連絡が入って、せっかくのバカンス気分が台無しになったという経験をされた方も多いのではないでしょうか?あるいは、仕事の都合で休暇を早めに切り上げる、なんてこともあったのでは?
ワーケーションが日本でも注目されるようになったのは、このような休暇の質の低さが社会問題になってきているからです。
エクスペディアが2018年に世界19カ国を対象として実施した調査では、日本は有休取得率も取得日数も2016年から3年連続で最下位でした。この原因としては、日本人には有休取得に罪悪感がある人の割合が58%もいることが挙げられます。これは19カ国中1位。しかし一方で、休み不足と感じている人の割合は18歳~34歳で62%、35歳~49歳で61%です(50歳~は40%で、これも有休取得率の低さの一因と言われています)。
つまり日本人は休暇を取ることに後ろめたさを感じる一方で、若い世代を中心に休みが足りないと感じているのです。
そこでワーケーションなのです。
日本人が休暇に後ろめたさを感じる理由は、同僚が働いているのに自分だけ休んでいることや、仕事をする気がないと思われたくないことにあります。しかし、ワーケーションなら仕事をしながらも休暇を取得することができ、しかも働いた分は勤務時間と認められるのであれば、罪悪感は大きく軽減されることになります。休暇を取りたいが、その期間中にどうしても終わらせたい仕事があるときもワーケーションなら、そのニーズを満たすことができます。
ワーケーションにより直接的に有休取得日数が増えるわけではありません。ですが既に導入している日本航空では、ワーケーションの副次的な効果として有休取得率が向上し、残業時間も削減されたそうです。これは、休暇や労働時間に関する従業員の意識が向上するからだと考えられます。
ワーケーション導入によるメリットと課題
ワーケーションには、さまざまなメリットがあります。下表に従業員、企業(経営者)、地域・行政、事業者それぞれの立場におけるメリットをまとめました。
一方、導入には以下のような課題があるのも事実です。
労務管理の仕組みや就業規定の再整備 例)労災の適用範囲、交通費・通信費、宿泊代等費用の規定等
業務マネジメント 例)進捗管理、勤怠管理、コミュニケーション管理等
ワーケーションに対する理解度・納得感の違い 例)年代別、男女別、業種・業界、適する業務と適さない業務
ワーケーション本来の目的を超えた施設の贅沢化や誘致の過熱
またワーケーションの前提として、テレワークのインフラ整備がありますが、それにはICT機器やネットワークの導入だけでなく、リモートでの承認や合意、ワークフロー処理を可能とする電子契約システムの導入も必要です。
こうした課題が1つ1つ解決されれば、ワーケーションは一般的になることでしょう。
まとめ
旅行を楽しみながら働くワーケーションは、場所にとらわれずに働くことができるテレワークの究極の発展形。異なる場所で働くことでリフレッシュできたり新しいアイデアが生まれたり、また家族と一緒に休暇を過ごす時間が増える等のメリットがあります。青い海に面したテラスや、大自然に囲まれたロッジのバルコニーで仕事ができるなんて夢のようですね。
実は、さらに新しい働き方も出てきています。
1つは、ブリージャー(Bleisure)。ビジネス(Business)とレジャー(leisure)の合成語で、出張の前後に観光やレジャーの日程を追加した新しい出張スタイルです。
もう1つは、バンライフ(Vanlife)。キャンピングカーなどのクルマで旅をしながら仕事をする働き方です。
このように会社員でありながら、多様な働き方ができる時代がやってこようとしています。そして政府を挙げての働き方改革の推進、環境省のワーケーションへの取り組みなどを見ても分かるように、国がその動きを積極的に推し進めようとしています。
少子高齢化による労働人口減少のトレンドの中で優秀な人材を確保したい企業は、テレワークを導入し、積極的に多様な働き方を可能にしていく必要があるでしょう。
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