今こそ法務部のDXを!法務機能を高める「デジタル法務」とは何か?
昨今、契約業務や法務リスクチェックなどの法務部の業務においてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する「デジタル法務」が注目を集めています。本記事では、「デジタル法務とは何か?」といった基礎知識から、注目が集まる背景や具体的なメリットなどを解説し、法務部門の現在と来るべき未来像を探っていきます。
企業があらゆる領域でデジタル化を推進する昨今、法務部の業務においてもデジタル技術を取り入れる動きが活発化しています。こうした取り組みは「デジタル法務」と呼ばれ、電子署名や文書管理、契約レビューなどのIT製品・サービスが盛んに活用されています。
本記事では、デジタル法務についての基礎知識やデジタル法務が広がっている背景、さらに今後、法務への活用が期待されるAI(人工知能)やスマートコントラクトについて解説し、法務部門発の企業のイノベーションのあり方に焦点をあてていきます。
リーガルテックを活用した「デジタル法務」とは
デジタル法務とは、契約書の作成や契約手続きといった企業法務においてリーガルテックを活用し、業務の進め方や価値提供の方法を抜本的に変えること、すなわち法務部においてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することです。リーガルテックとは法律(Legal)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、デジタル技術を用いて企業法務の効率化を図ることや、その際に用いられるIT製品・サービスを指します。
現在、リーガルテックは右肩上がりで市場を拡大しており、2019年に発表された矢野経済研究所の調査では、リーガルテックの国内規模(事業者売り高ベース)は、2016年から2023年までのCAGR(年平均成長率)が9.8%で成長し、2023年には353億円に拡大すると予測されています(※1)。
また、リーガルテックの種類も増加しており、電子署名・電子契約サービス、契約書・文書管理サービス、契約書のレビュー、登記や各種申請の支援、弁護士のオンラインマッチングサービス、eディスカバリ(電子データの開示手続き)、フォレンジック(セキュリティ被害時などに、法的証拠を調査・保存するサービス)など、多岐にわたる製品やサービスがリリースされています。
さらに、近年では、リーガルテックの技術的な進化も続いています。その一例が、ブロックチェーン技術を利用し、あらかじめプログラム化された契約を自動的に履行できる「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトをリーガルテックに活用することで、取引コストの削減、取引の効率化、取引先にかかるリスク低下が実現できます(※2)。これにより、例えば、契約書に記載されている銀行口座の詳細が正しいかどうか確認したり、もし銀行口座情報が間違っている場合には、自動的に契約が成立しないように制御することも可能になります。
法務部が抱える課題から紐解く「デジタル法務」が広がる背景
では、なぜデジタル法務が注目されているのでしょうか。いくつかの課題に着目して紐解いてみましょう。
近年のグローバル化やコンプライアンス強化が加速する中で、企業を取り巻く環境は急速に変化しています(※3)。そのため、法務機能も常に経営の変化に対応し、適した形を目指して、強化され続けていくことが求められています。そして、その取り組みにはリソースをどのように捻出するかが課題となります。新たな取り組みを始めるためには、既存の契約審査業務などを効率化し、かつ業務品質を維持向上するなどの工夫が求められます。そこで、リーガルテックの活用によるリソース強化に期待が高まっているのです。
また、テレワークの普及に伴い、紙ベースの契約書や法務資料・押印作業なども法務部の課題になっています。在宅勤務などオフィスで働いていない場合、紙ベースの契約書や法務資料は利用することが困難であり、押印作業も業務の生産性を阻害する要因となります。そのため、電子署名や法律専門書のデータベースのようなサービスの必要性が高まり、リーガルテックを活用した抜本的な業務改革が進んでいます。
デジタル法務で法務部が得られるメリット
デジタル法務の実現により、法務部では以下のようなメリットが期待できます。
企業法務の業務効率化
電子署名サービス、契約書作成や管理ツールの活用などにより、契約手続きの効率化や迅速化が可能になります。契約手続きの工数・タイムラグを減らすことで、契約締結業務全体を効率化できます。
法務リスクの低減・リスクマネジメントの強化
AIでの分析などにより、契約内に潜む法務リスクを抽出し、未然に契約上のトラブルを防ぎます。例えば、新規案件の契約書をAIがレビューし、文言の抜け漏れなどを防ぐことができます。
経営へのデータ活用
デジタル法務により得られたデータを、企業の成長・発展の取り組みへつなげることで、新たなビジネスの可能性を見出すことができます。例えば、AIを活用したリーガルテックにより、契約データを分析・可視化し、収益の傾向や潜在的な利益を把握することが可能です。それにより、従来よりも迅速な経営の意思決定や、適切な業務改善が可能となり、事業を変革するイノベーションの創出が期待できます(※4)。
なお、ドキュサインの製品のひとつ「Docusign Insight」(日本未ローンチ)は自然言語処理、機械学習などのAI機能を盛り込んだ契約インテリジェントツールで、契約を分析・可視化することで収益性の向上や契約に関するリスク回避などを実現します。
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電子署名からはじめるデジタル法務
デジタル法務は、企業法務の効率化だけではなく、経営の意思決定や企業価値の向上を可能にする取り組みです。今後もスマートコントラクトを活用したり、モバイル、AI、ビックデータなどの技術をもとに進化し、さらに精密な経営分析やデータ活用が可能になると期待されています。
変化の激しい市場環境の中で、可能な限りリスクを低減させ、最良の意思決定を下すために、デジタル法務は欠かせない取り組みです。2021年度の税制改正では、「新たな日常」に向けた企業の経営改革を実現する投資促進の1つとして「DX投資促進税制」が創設されており、デジタル法務を実現しやすい環境も出来上がりつつあります。
デジタル法務を実現するために、電子署名を活用することは有効な手段の1つです。電子署名で契約書のペーパーレス化を進め、署名・捺印プロセスをデジタル化するところから始めてみてはいかがでしょうか。
ドキュサインでは、30日間ご利用可能な無料トライアルをご用意しています。ぜひこの機会にドキュサインの電子署名をお試しください。
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参考:
※1 矢野経済研究所 2019年9月27日 リーガルテック市場に関する調査を実施(2019年)
※2 高橋 郁夫・ほか編(2018)「デジタル法務の実務Q&A」日本加除出版株式会社
※3 経済産業省 令和元年11月19日 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書
※4 令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について