電子署名がなされた電子契約の法的効力に関するよくある質問
2021年4月14日(水)開催の特別ウェビナー『電子署名がなされた電子契約の証拠力に関する最新事情』で寄せられた質問の中から、注目したいQ&Aの内容を「電子署名、電子契約の有効性に関する質問」と「電子署名者の権限に関する質問」に分けてご紹介します。電子署名の導入を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
前回のブログ『電子署名法第3条Q&A公表後の動きと法人顧客との契約締結におけるポイント』では、2021年4月14日(水)に開催された特別ウェビナー「電子署名がなされた電子契約の証拠力に関する最新事情」(以下、本ウェビナー)から、電子署名が必要とされる背景や電子署名法3条Q&A公表後の動き、法人顧客と契約を締結する場合の諸問題について解説しました。
今回は、本ウェビナーの質疑応答で寄せられたご質問の中から、注目したいQ&Aの内容をご紹介します。『電子署名法第3条Q&A公表後の動きと法人顧客との契約締結におけるポイント』とあわせてご覧ください。
電子署名、電子契約の有効性に関する質問
二者間での契約において一方が記名押印(紙での署名)、一方が電子署名となっても契約書は有効でしょうか?
実体法(民法)の観点からは、両当事者の有効な契約締結意思があれば、上記のような契約も有効と考えられます。
しかし、裁判手続や税務調査等の文脈において、当該契約の原本を紙の契約書とするのか電子的なファイル(PDF等)とするのかなどの問題が発生しますので、注意を要するでしょう。
一方が電子署名、もう一方が紙で締結済の契約書を保管したい場合、例えば「以上合意の証として、本書2通又は本電磁的記録を作成し、各当事者が記名捺印又は電子捺印を施した上、各自本書1通又は本電磁的記録を保有する。」と契約書の末尾に記載することは有効でしょうか。
実体法(民法)の観点からは、両当事者の有効な契約締結意思があれば、上記のような契約も有効と考えられます。
裁判手続や税務調査等の関係では、契約書末尾にどのように記載するかという点に加えて、紙の契約書又は電子的なファイルのどちらを原本として保管するかについて整理が必要となります。
3条の電子署名に該当するには、認証局からの電子証明書の発行が必要でしょうか。電子証明書を取得していない電子署名サービスは、2条電子署名に該当するという認識になりますか?
3条Q&Aを踏まえると、3条電子署名と認められるためには、(事業者名義の)電子証明書の発行とともに二要素認証等の「固有性の要件」を充足する必要があります。
なお、電子署名法3条の要件を満たさない場合でも、電子署名法2条の適用が認められれば2条電子署名として低リスク類型の契約等に利用できます。
書類にアクセスする為にパスワードを要求するサービスがあります。これは二要素認証に該当しますか。
「二要素認証」は電子署名サービスにアクセスする際の電子メール認証やワンタイムパスワード認証等を意味すると思われますので、書類自体に設定されたパスワードは必ずしも該当しないと思われます。
事業者型(立会人型)電子署名も電子署名法3条の要件を満たす可能性があること、実際には係争が発生しないと確定できないことは理解できましたが、(係争が発生した場合に備え)どのような視点から事業者型(立会人型)電子署名での契約を社内で推進すればよいでしょうか。3条電子署名を使って総合証拠化アプローチの1つをとれば、高リスク契約類型でも電子契約を推進してもよいでしょうか。
高リスク契約類型においても、代表者(又は代表印を押印する権限を有する者)の3条電子署名を求める等の方法によりデジタル化が可能ですが、まずは低リスク類型からのデジタル化をお勧めします。高リスク類型のデジタル化が求められる場合や契約相手方がデジタル化未対応の場合には、たとえば取引開始時には紙の契約書を作成し、その後の個別契約や継続契約において電子署名を利用するなどのハイブリッド的な対応が考えられます。
電子署名者の権限に関する質問
代表者(を名乗る人)の電子署名があっても、署名の時点で代表権限を持っていることを確認する必要はありますか。たとえば退職した社長の電子署名を無効とするなどを想定しています。
この問題は紙の契約書でも電子契約でも同じであり、電子契約に限った問題ではありません。電子でも紙の契約書でも、契約締結時の代表権を確認する必要はあります。具体的には相手方法人の最新の商業登記(登記事項証明書)で確認したり、権限についての表明保証をさせたりするとよいでしょう。
電子署名は基本的に法人の役職員(自然人)の電子署名であって法人の電子署名ではないという整理は正しいでしょうか?
電子署名法と商業登記法の役割分担の観点から、電子署名法は法人そのものの電子署名ではなく、法人の役職員(自然人)の電子署名に関する規定をしているという理解は正しいといえます。但し、電子署名を行う法人の役職員に関する権限等を確認することで、そのギャップを埋めることは可能と考えられます。
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