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2021年9月設立へ - デジタル庁はまず何に取り組むのか?

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デジタル改革関連法の成立により、2021年9月の設立が決定したデジタル庁。菅政権発足以来、多くの注目を集めているデジタル庁は、まずどのような政策に取り組むのでしょうか。本記事では、デジタル改革関連法の内容をひも解きなら、今後見込まれる具体的な政策について解説します。

目次

国会議事堂

2021年5月12日、デジタル庁の設立などを定めた「デジタル改革関連法」が成立しました。これにより、2021年9月1日のデジタル庁設立が決定し、菅政権の主要政策の1つである「デジタル社会の実現」が本格的に推進されることとなりました。

今回設立が決定されたデジタル庁は、具体的にどんな組織で、どのような政策に取り組むのでしょうか。本記事では、デジタル庁の組織やデジタル改革関連法の内容をひも解き、今後見込まれるデジタル改革の具体的な政策について解説します。

デジタル庁の設立は2021年9月に決定。約5分の1を民間人材から登用

5月12日、デジタル改革関連法が参議院本会議で可決・成立し、2021年9月1日のデジタル庁設立が決定しました(※1)。

デジタル庁は、従来、各省庁に分散していたデジタル政策を一元化し、デジタル社会形成の司令塔としてデジタル政策を推進する役割を果たします。そのため、内閣直属に位置付けられ、各省庁に対して意見を提出できる勧告権を有するなど、強い権限が与えられています。また、以前は各省庁に割り振られていたデジタル政策関連の予算も、段階的に一元化される見通しです。

各省庁に分散していたデジタル政策をデジタル庁に一元化

各省庁に分散していたデジタル政策をデジタル庁に一元化(「デジタル庁note記事「デジタル庁は「行政の透明化」を掲げ、noteでの発信を始めます。」より引用) 

デジタル庁は内閣総理大臣を組織の長に据え、その直下にデジタル大臣を設置します。さらに、事務次官に相当する特別職として「デジタル監」を設け、各部局などの事務の監督にあたります(※2)。組織人員は約500名。そのうち120名程度は民間企業や大学などの民間人材の登用が予定されており、デジタル監も民間人材の起用が検討されていることから注目を集めています。

おすすめ記事:スローガンは「GASU」。デジタル庁の新設で私たちの生活はどう変わるのか?

デジタル改革関連法からデジタル庁の政策をひも解く

今回成立したデジタル改革関連法は、以下の6つの法律から成ります。

  • デジタル庁設置法

  • デジタル社会形成基本法

  • デジタル社会形成整備法(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律)

  • 公金受け取り口座登録法(公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律)

  • 預貯金口座管理法(預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律)

  • 自治体システム標準化法(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律)

では、この関連法によって、どのような政策が進められるのでしょうか。例えば、公金受け取り口座登録法と預貯金口座管理法では、マイナンバーと個人の預貯金口座のひも付けが進められ、給付金支給の迅速化などが図られます。

2020年に実施された新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における特別定額給付金の支給時には、行政による個人の預貯金口座の把握に時間がかかり、支給に遅れが出るなどの課題が指摘されていました。こうした課題を解決するため、今後はマイナンバーと預貯金口座が、本人同意に基づいてひも付けられ、緊急時の給付金や児童手当といった公的給付の迅速な受け取りが可能となります。

マイナンバーと個人の預貯金口座のひも付けイメージ

マイナンバーと個人の預貯金口座のひも付けイメージ(デジタル庁「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」概要からの引用)

また自治体システム標準化法では、独立していた各地方自治体間のシステムの標準化が進められます。これまで各地方自治体は事務処理などで共通した部分が多く存在していましたが、システムが独立していたために、情報の共有や事務処理における効率性に数多くの課題がありました。そこで同法により、政府が作成した基本方針に沿ったシステムの標準化が測られるほか、各地方自治体におけるシステムのクラウド移行も進められることとなりました。

デジタル庁設立で個人情報保護にも変化

デジタル社会形成整備法には、個人情報保護法の改正も盛り込まれています(※3)。従来、個人情報保護に関する法律は、民間向け、行政向け、独立行政法人向けと複数の種類が並立していました。さらに、地方自治体ごとにも条例を定めていることから、個人情報保護の関係法令は約2000個にものぼります。こうした複雑な法令の違いから、緊急時に自治体間などで個人情報の円滑な共有ができない問題を「2000個問題(※4)」と呼び、以前から見直しが求められていました。

そこで、デジタル社会形成整備法は、個人情報保護に関する全国的な共通ルールの規定を定めており、所管組織も内閣府の行政委員会である個人情報保護委員会(PPC)に一元化するとしています。

さらに、従来は情報の取扱主体者によって統一化されていなかった「個人情報」の定義を国・民間・地方自治体などで統一し、匿名加工した個人情報を自治体が民間に提供できる制度が導入される見通しです。これにより、行政サービスや民間のビジネスにおける個人情報の利活用が進み、利便性の高いサービス提供が可能になると見込まれています。

ポイントは「デジタル化の利便性」と「個人情報保護」のバランス

一方、デジタル改革関連法には、個人情報保護やプライバシーの観点から懸念の声も挙がっています。例えば、日本弁護士連合会は2021年3月に会長声明を発表し、「デジタル改革関連6法案は、(中略)情報の主体である個人の権利・利益への配慮が十分なされているとは言い難く、プライバシーや個人情報の保護を後退させるおそれが強く危惧される」としています(※5)。

「誰一人取り残さないデジタル社会」の実現を掲げ、設立されるデジタル庁。今後、デジタル技術を活用した行政サービスの利便性向上などが推進される一方で、個人情報保護やプライバシーとのバランスにも配慮が求められています。デジタル社会の実現を左右する、個人情報保護の今後の動向にも注目です。

2022年施行予定!改正個人情報保護法のポイントを解説 →

参考資料:

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