テレワーク最前線シリーズ4:「テレワークあるある」から考える「真の働き方改革」とは?
働き方改革の実現を目指してテレワークを導入している企業も多いかと思いますが、テレワークはあくまで働き方改革のための重要な手段の1つです。そもそも働き方改革とは何か?SNSで呟かれている #テレワークあるある から見えてくる課題とは?今回はテレワークの側面から「真の働き方改革」を実現していく方法をご紹介します。
シリーズでお送りしている「テレワーク最前線」。今回は、働き方改革とテレワークの関係を考えてみたいと思います。
働き方改革については、労働時間短縮や柔軟な働き方がクローズアップされているため、「働き方改革=テレワークの推進」と誤解している方もいらっしゃるかもしれません。
テレワークの推進は、あくまでも働き方改革のための重要な手段の1つです。テレワークを導入した=働き方改革を実現した、と勘違いしていると、従業員にとっても企業にとっても「残念な働き方改革」になってしまいかねません。
では「残念な働き方改革」にならないためには、テレワークをどう位置づけたらよいのでしょうか。
「働き方改革」とは何か?
平成29年3月28日、総理大臣が議長となり、労働界と産業界のトップおよび有識者が集まった「働き方改革実現会議」で、「働き方改革実行計画」がまとめられました。この計画は、日本の働き方にある3つの課題――①正規・非正規の処遇の差、②長時間労働、③単線型のキャリアパス――を解決し、「一億総活躍社会」を実現することを目標とするものです。
厚生労働省は、「働き方改革」の実現に向けて、以下の7つを具体的な取り組みとして挙げています。
長時間労働の是正
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
柔軟な働き方がしやすい環境整備
ダイバーシティの推進
賃金引き上げ、労働生産性向上
再就職支援、人材育成
ハラスメント防止対策
テレワークの推進だけで全ての取り組みをカバーできないのは明らかです。しかしテレワークの推進が役に立つ範囲も極めて広いと言えます。
テレワークの推進で実現できる「働き方改革」
では、テレワークの推進が役に立つ取り組みとは具体的に何でしょうか。
柔軟な働き方がしやすい環境整備
日本テレワーク協会は、テレワークを「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義し、具体的な働き方として在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務の3形態を挙げています。(詳しくは「テレワーク最前線シリーズ第1回」をご参照ください。)また、通勤の必要がないので、地方や海外に在住している人も雇用できるようになります。
長時間労働の是正
テレワーク用端末の接続方式にもよりますが、たとえば仮想デスクトップ方式(VDI)で接続すれば、決められた時間に端末を強制的にシャットダウンすることができます。テレワークのためにVDIを導入する企業も多いようですので、このシャットダウン機能をうまく活用すれば、長時間労働の防止に役立ちます。ただ、データ入力の途中でいきなりシャットダウンされてしまった、など業務に差し支えない範囲で効果的に管理することが大切かもしれません。
ダイバーシティの推進
「ダイバーシティ」と聞くと、女性・障がい者・外国人・高齢者等が活躍しているイメージが湧くでしょう。ですが、働き方改革で想定しているダイバーシティはもう少し範囲が広く、病気治療中あるいは子育て・介護中の社員も含んでいます。このような社員が活躍するためには、テレワークの導入が必須なのは言うまでもありません。
賃金引き上げおよび労働生産性向上
総務省の「平成29年通信利用動向調査」によれば、労働生産性向上目的でテレワークを導入した企業の28.5%が「非常に効果があった」、53.6%が「ある程度効果があった」と回答しています。何と8割を超える企業が「効果があった」としています。
テレワークの導入により削減された通勤交通費やオフィスコストを、テレワーク手当として給与に上乗せする、という企業もあるそうです。
こうした効果に注目して、テレワークを導入する企業も増えてきています。
パーソル総合研究所が2020年3月9日~15日と4月10日~12日に2回にわたって実施した調査では、テレワークの実施率がわずか1カ月で13.2%から27.9%に増えていました。東京都に限れば、23.1%から49.1%に増えています。この調査と国税調査を照らし合わせた簡易推計では、この1カ月間でテレワークを行った人は約400万人増加し、約760万人がテレワークを実施していることになる、とのことです。
それからさらに約2カ月経過した現在には、さらに実施率が向上しているものと考えられます。
「テレワークあるある」から見える課題とは
このように働き方改革を実現するために、いいことがたくさんあるはずのテレワーク。しかし、いざ実際にやってみると様々な問題が発生しているようです。SNSではこんな「あるある」が投稿されています。
ビデオ会議に慣れていないため、いつの間にかマイクがON。プライベートが丸出しに
公私の区別がつかずに一日中パソコンに縛られ、テレワークが残業の隠れ蓑に
飼い猫がやってきて、キーボードの上でおやすみ
生活リズムが乱れて不眠症に・・・
作業時間の管理のためにわざわざExcelに記入(システムで管理されているはずなのに二重管理)
案件の内容が複雑でリモートでは何度説明しても伝わらなかった
ビデオ会議中に宅配便が届き、鳴り響くピンポンの音
社食が利用できず食事を作るのが面倒、テイクアウトやフードデリバリーばかりで食費がかかる
皆さんは、こんな経験はありませんか?
ユーモラスな内容も多くありますが、中には健康を害したり、二重管理が発生したり、コミュニケーションがうまくいかなかったりなど深刻な問題も発生しています。
深刻な問題が多いようだと、テレワークを導入しても働き方改革にはほど遠いということにもなりかねません。
「残念な働き方改革」にならないためのポイントとは
単に残業や休日出勤を禁止したり、テレワークを導入したりすれば働き方改革が実現できるわけではありません。
残業や休日出勤に関して言えば、それらが発生している根本原因を取り除かない限り、実際にかかる労働時間は減らないわけですから、結局は社員が持ち帰りで「サービス残業」をすることになってしまいます。
働き方の改革には、次のようなステップでの取り組みが考えられます。
自社の「働き方」の現状を把握する(労働量、労働時間、労働生産性、業務内容、業務フロー、利益を生んでいる仕事とそうでない仕事、やらなくてもいい仕事など)
現状で起きている課題を網羅的に列挙する
優先順位を意識した課題解決案を策定する
目標と期限を明確にしたロードマップを作成する
体制を組んで、会社一丸となって取り組む
社員のITリテラシー向上など人材教育に取り組む
上記の「テレワークあるある」でみてきたように、実際にテレワークを始めてみると、予想もしていなかった様々な問題が浮き彫りになってきます。単にテレワークを導入するだけではなく、実際に運用して明らかになった課題を解決して、より良いものにしていく、つまりPDCAサイクルを回していくことが重要です。最終的な目標を「働き方改革の真の実現」に定め、それに合わせて自社のテレワークを改善していきましょう。
まとめ
テレワークの導入は、働き方改革を実現するための1つの手段となるだけでなく、それ以外にも様々なメリットがあります。毎朝満員電車に乗らずに済み、今まで通勤に使っていた時間をもっと有効に活用できるようになるだけでなく、旅行を楽しみながら仕事をする「ワーケーション」という働き方も可能になるかもしれません。
次回の最終回では、2000年代に米国で生まれ、日本でも話題になり始めている「ワーケーション」をご紹介します。
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参考: