早いうちから準備を!デジタル改革関連法から読み解く押印・書面の廃止
デジタル改革関連法が2021年5月に成立し、9月1日から施行されます。本記事では、その中で推進される「押印・書面の廃止」にスポットを当て、関連するデジタル社会形成基本法やデジタル形成整備法について解説しながら、社会における押印や書面の手続きの今後のあり方について考察します。
2021年5月12日、社会全体のデジタル化を目指す6つの法律「デジタル改革関連法」が国会にて可決・成立しました。これにより、9月1日にデジタル庁が設立されることが決定し、デジタル化に関するさまざまな政策が推進されることになります。そして、そうした政策の1つに数えられるのが「押印・書面の廃止」です。菅政権発足以降、急速な勢いで進められてきた「脱ハンコ」。その具体的な政策や方針がデジタル改革関連法に示されています。そこで本記事では、デジタル改革関連法の中から「デジタル社会形成基本法」や「デジタル社会形成整備法」について紐解き、押印・書面の廃止の具体的な内容や社会への影響などについて解説します。
デジタル社会形成基本法が目指す「国民の利便性の向上」
デジタル改革関連法の中で、押印・書面の廃止はどのような位置付けにあるのでしょうか。それを知るためには、デジタル改革関連法の中でも、デジタル社会の実現に向けた基本方針が示されている「デジタル社会形成基本法」に目を通す必要があります。
デジタル社会形成基本法では、デジタル社会実現の目的の1つに「国民の利便性の向上」を挙げています(※1)。昨今、日本社会におけるデジタル化の遅れにより、国民生活の利便性が損なわれているという指摘が多くされています。その一例が、2020年の特別定額給付金の支給です。特別定額給付金の支給時は、多くの地方公共団体で遅れが目立ちましたが、その原因とされているのが、紙の書類による申請やそれに伴う郵送・受付業務の逼迫でした。
こうした課題を解決するため、行政手続きのデジタル化などを図り、国民の利便性向上を実現するのがデジタル改革関連法の目的です。デジタル改革関連法では、その目的を達成するため、マイナンバーカードの普及促進や、マイナンバーと個人の預貯金口座の紐付けなどが進められます。押印・書面の廃止も、その政策の一環として推進されます。
尚、デジタル改革関連法は、デジタル社会形成基本法を始めとした6つの法律で構成されており、デジタル庁の設置や自治体間のシステムの標準化など、さまざまな政策が盛り込まれています。以下のブログでは、デジタル改革関連法の概要について解説しています。デジタル改革関連法の全体像を知るためにも合わせてご覧ください。
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デジタル社会形成整備法で48の法律が改正され、押印・書面の原則廃止が実現
では、具体的にどのような見直しが図られるのでしょうか。押印・書面の廃止が盛り込まれているのは、デジタル改革関連法のうちの「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下、デジタル社会形成整備法)です。この中では、押印を義務付ける22の法律と、書面の交付を義務付ける32の法律(6法律は押印と重複)、計48の法律を一括改正しています(※2)。
つまり、デジタル社会形成整備法では、法律に根拠を有する押印や書面の交付を、法改正により廃止していくのです。これにより、菅政権が取り組んできた「脱ハンコ」の政策が、より推し進められる形となりました。
尚、廃止される押印は、住民票や婚姻届、戸籍などの届出(戸籍法)や宅地建物の媒介契約に必要な重要事項説明書(宅地建物取引法)などへの押印です。この廃止により、土地や建物の売買・賃貸契約のスムーズ化などが期待できます。
また、書面の廃止については、領収書やレシートなどの受け取り証書(民法)や建設工事の見積書(建設業法)の電子化などが進められています。身近な領収書の電子化も可能となり、環境に配慮した取り組みなども推進できると考えられます。
デジタル社会形成整備法で促進する電子署名の活用
デジタル改革関連法における押印・署名の廃止により、今後、私たちの社会はどのように変わっていくのでしょうか。デジタル改革関連法の成立に伴う付帯決議(2021年5月11日衆議院内閣委員会)から、具体的な姿を想像することができます。この決議では、押印・書面の廃止について、2つの項目を示しています(※3)。
まず、書面については「契約において書面の交付に代わり電磁的記録を提供する場合、契約内容に係る電磁的記録を消費者が容易に保存できる手段を確保するなど、適切な取り組みを事業者に促すこと」としています。従来、書面のみで交付されていた情報が、今後は電磁的記録での提供も可能になり、パソコンやスマートフォンなどの電子媒体でやり取りがされると予想されます。
また、押印については、「押印手続きの見直し等に伴い普及しつつある電子署名などのトラストサービスについて、その信頼性の確保が重要であることに鑑み、デジタル庁を司令塔として、国際的な相互運用性を踏まえつつ、信頼性を評価するための基準の策定及び評価に関する包括的な仕組みの構築に取り込むこと」としており、電子署名サービスの活用促進が示唆されています。
『地方自治法施行規則の改正で加速する!?地方公共団体の電子契約』で解説している通り、これまで様々な規制により、地方公共団体などの行政組織では電子署名の活用が進みませんでした。デジタル改革関連法の成立をきっかけに、新たな基準の枠組みが示されたことで、電子署名が社会に広く普及していくと期待されます。
新たな時代に向けて企業に求められる対応
デジタル改革関連法の施行により、社会のデジタル化の流れはいよいよ本格化しつつあります。今後、社会全体でスピーディーにデジタル化が推進され、法律の規制などによりデジタル化が進まなかった地方公共団体など、さまざまな分野に影響が及んでいくことでしょう。また、私たちの生活自体もデジタル化が進み、スマートフォンやタブレットを利用したサービスもますます増えていくと予想されます。
企業は、こうした社会の変化を「変革の機会」ととらえて、自社の業務のデジタル化に取り組んでいくべきではないでしょうか。また、新たな時代に対応するためにも、押印や書面の手続きを見直すことは急務と言えるでしょう。
既存のフローを大きく変えることなく、紙の文書やマニュアル作業の多い合意・契約プロセスをデジタル化するための手段として、電子署名は有効な手段のひとつです。ドキュサインでは30日間無料で使えるお試しプランをご用意していますので、ぜひこの機会に自社の文書管理や契約業務などのあり方を見直し、押印や書面の削減を進めてみてはいかがでしょうか。
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参考: