何ができる?6G(第6世代移動通信システム)が実現する未来とは
2030年には商用サービスが始まるとみられている「6G(第6世代移動通信システム)」。6Gとはどういった特徴を持ち、どのような世界を実現していくのでしょうか。本記事では、次世代の5Gである「5G-Advanced」の動向や「6G」の特徴、また「Beyond 5G」と「6G」の違いについて解説します。
2020年3月より商用サービスが始まった「5G(第5世代移動通信システム)」。まだ 5G のメリットを実感していないという方も多いかもしれませんが、世の中は 5G の次、「6G(第6世代移動通信システム)」に向けて動き始めています。
本記事では、次世代の 5G である「5G-Advanced」の動向から、その先となる「Beyond 5G」に向けた取り組みや「6G」が実現する未来について紹介します。また、「Beyond 5G」と「6G」の違いについても解説します。
移動通信は5Gから、その先の「Beyond 5G」へ
5G の商用サービスがスタートして約2年が経過しました。人口カバー率が90%を超えるキャリアが出てくるとともに、5G のアンテナもずいぶん増えてきています。
4G と比較して10~20倍とも言われる 5G の高速通信。「体感では分からない」「大きな駅の近くでないとつながらない」と感じる方もいるかもしれませんが、ビジネスの現場では活用が進んでいるところもあります。例えば、企業や自治体などが自らの建物や敷地内でスポット的に 5G ネットワークを構築し、利用可能とする「ローカル 5G」の利用が進んでいます。
そして、5G は現在進行形で進化を続けています。「5G-Advanced」と呼ばれる高度化バージョンでは 5G のさまざまな機能や性能の強化が行われる予定で、標準化団体である「3GPP(※1)」においてまさに今、標準化に向けた作業が進められています。5G-Advanced の仕様については2023年以降に明らかになってくる予定で、2025年頃には対応製品も投入されてくると予想されています。
さて、5G があれば当然その次の「6G(第6世代移動通信システム)」が気になるところです。その言葉通り、6G は 5G の次の世代となる移動通信システムです。5G-Advanced 標準化の後に仕様の策定が始まる予定で、実際に商用サービスがスタートするのは2030年頃と言われています。しかし、国および企業はそれをただ待っているわけではありません。すでに 6G に向けてさまざまな取り組みを始めているのです。
なお、「6G」のほか、「Beyond 5G」「Beyond 5G/6G」「Beyond 5G(6G)」などさまざまな表記を見かけることがありますが、それぞれの意味に大きな違いはありません。6G という名称はまだ正式に発表されていないため、「Beyond 5G(5Gの先へ)」として取り組みを進めているということになります。Beyond 5G という言葉は、6G もしくはそれ以降の 7G、8G といったところも視野に入れての取り組みを指すこともありますが、6G よりも先のことは想定が難しい部分が多く、おおよそ 6G に向けての取り組みを指していると考えて良いでしょう。
Beyond 5G(6G)に向けた取り組み
総務省は2020年6月、「Beyond 5G 推進戦略 - 6G へのロードマップ-」を公表しました(※2)。それによると、Beyond 5G は、5G の特徴的機能をさらに高度化させた、「超高速・大容量」「超低遅延」「超多数同時接続」により、あらゆる場所からの膨大なデータを瞬時に正確に処理できるようになるとされています。またこうした 5G からの進化に加え、新たに次のような機能が求められています。
自律性:AI 技術などを生かして、機器が自律的に連携し、有線/無線を問わず瞬時に利用者のニーズに合わせた最適なネットワークを構築する機能。
拡張性:端末や基地局が異なる規格の通信システムとシームレスに繋がり、端末やガラスアンテナなどさまざまなものも基地局化して、機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含む、場所を問わない通信を利用可能とする機能。
超安全・信頼性:セキュリティやプライバシー保護が常に確保され、万一のトラブルの際にもサービスが途絶えることなく、瞬時に復旧する機能。
超低消費電力:通信インフラの消費電力を現在の1/100程度に抑えることを目指す(2030年のIT関連の電力消費量は2016年の36倍と試算されており、この電力問題に対応するため)。
つまり 5G よりもさらに高速・低遅延で、多数の端末が接続可能なことに加え、ユーザーは最適なネットワークを安全かつどこからでも利用できるようになります。そして超低消費電力により、これまで以上にさまざまなモノがネットワークに接続されるようになります。
また、2020年12月には、産官学で 6G を推進する団体「Beyond 5G 推進コンソーシアム(※3)」が設立されました。ロードマップに基づいた産学官の連携により、強力かつ積極的に戦略を推進し、Beyond 5G の早期かつ円滑な導入、Beyond 5G における国際競争力の強化を目指しています。また同時に総務省は「Beyond 5G 新経営戦略センター(※4)」を設立し、Beyond 5G 推進コンソーシアムと連携して、戦略的に知的財産権の取得や国際標準化などに取り組んでいます。
Beyond 5G(6G)でビジネスはどう変わるのか?
それでは、Beyond 5G の特徴である「超高速・大容量」「超低遅延」「超多数同時接続」「自律性」「超安全・信頼性」「超低消費電力」により、何ができるようになるのでしょうか。仕様や技術が明らかになっていくのはまだ先の話ですが、キャリアをはじめとするさまざまな企業や団体がコンセプトを発表しています。
NTTドコモの考える 5G の高度化、および 6G の技術的な展望をまとめたホワイトペーパーには、将来の技術的進化の方向性、要求条件やユースケース、6G 時代の新たな提供価値、技術的な検討領域の展望などが記されています。
6G に向けた挑戦を実現することで、日本における完全デジタル化を推進し、『情報革命で人々を幸せに』することを目指し、Beyond 5G/6G に向けた 12 の挑戦を発表しています。また 6G に向けた挑戦の具体的な事例も紹介しています。
2030年頃のライフスタイルやユースケースを示したうえで、これを実現するために必要な、無線通信技術などを含む「7つのテクノロジー」を構成する要素技術を紹介するホワイトペーパーです。
Beyond 5G/6G 世界の実現に向けて検討を行ったホワイトペーパーです。2030年以降の社会生活をイメージした4つのシナリオを作り、これらのシナリオに描かれた未来社会からバックキャストすることで必要な要素技術を洗い出しています。
これらのコンセプトで共通するのは、Beyond 5G(6G)によりサイバー(仮想空間)とフィジカル(現実空間)が融合し、働き方や暮らし方が大きく変化するということです。「サイバーフィジカルシステム(CPS)」と呼ばれる世界、つまりサイバー空間で得たデータやその分析結果をフィジカル空間で生かそうという取り組みが、Beyond 5G(6G)により現実のものとなるのです。
これにより実現される世界を、例えば NICT の「Beyond 5G/6G White Paper」では「Beyond 5G/6G 時代の未来生活」として、想定されるユースケースを紹介しています。具体的には、遠隔の会議は 3D アバター同士で行われ、サイバー空間を移動することで、瞬時に対応が可能となります。XR(Cross Reality、現実世界と仮想世界の融合)技術により、働き方は大きく変化することでしょう。
5G は「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」というその特徴から私たちのビジネスを変えました。テレワークやWeb会議などでその恩恵を受けている方も多いでしょう。
Beyond 5G はあらゆる業種にさらに影響を及ぼすします。一例を挙げれば、「超高速・大容量」「超低遅延」で「超安全・信頼性」のネットワークを用いた遠隔医療のさらなる充実も想像に難くありません。また Beyond 5G と、同時に進化していくであろう、AI(人工知能)や IoT の技術が融合すれば新たな製造業の形が生まれるかもしれません。
日本では、Beyond 5G(6G)に向けて、産学官が連携して要素技術の研究・開発から早期かつ円滑な導入、競争力の強化を目指していきます。Beyond 5G(6G)によりモバイル端末がさらに快適に利用できるだけでなく、進化し続けるテクノロジーなどともあいまって、今の私たちには想像もつかないゲームチェンジが2030年代からの働き方・暮らし方を大きく変えていくことでしょう。
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参考: