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行政手続きにおける「認印全廃」で脱ハンコの流れが加速

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2020年11月13日、河野太郎行政改革担当大臣は行政手続きから「認印の押印」を全廃すると発表しました。急速なスピードで進められる菅内閣のデジタル化政策。その中でハンコはどのような役割を果たし、どう変化していくのか。これまでの政府による「脱ハンコ」の取り組みを振り返りながら考察します。

目次

婚姻届に押印する男女

政府が主要な政策の1つとして掲げる「行政のデジタル化」。それに伴い、デジタル庁の新設など、行政手続きの効率化を目指すさまざまな政策が推進されてきましたが、先日その具体的成果が発表されました。それが、行政手続きにおける「認印の全廃」です。2020年11月13日の記者会見において、河野太郎行政改革担当大臣は、行政手続きにおける認印の押印を全廃すると発表しました(※1)。本記事では、認印の全廃に至るこれまでの経緯を振り返りながら、「脱ハンコ」の意義やその後の社会のあり方について考察します。

認印が必要だった行政手続きの約99%を脱ハンコ化!

近ごろ、耳にする機会が増えてきた脱ハンコの話題ですが、実は以前からその重要性はたびたび指摘され、議論の対象となっていました。例えば、2018年に政府が発表した「デジタル・ガバメント実行計画」の初版では、すでに行政手続きにおける押印を「デジタル化の障壁」として(※2)、見直しの方針を示しています。

しかし、急速に脱ハンコの議論が盛り上がり、今回の決定に至ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きいといえます。コロナ禍でテレワークへの対応に迫られ、官民問わず、さまざまな業界において、業務のデジタル化とそれに伴う脱ハンコの必要性が表面化しました。

そうした中、2020年9月に「行政のデジタル化」を主要政策とする菅内閣が発足。脱ハンコの流れは一気に加速します。発足から8日後の9月24日には、河野大臣が全省庁に向けて、業務内で原則ハンコを使用しないよう要請したほか、10月9日には、上川陽子法務大臣が婚姻届や離婚届への押印廃止を検討していることを明らかし、政府一体となった脱ハンコの取り組みが推進されます。そして、11月13日、河野大臣が認印全廃を発表。現在、押印が必要な約15,000件の行政手続きのうち、不動産登記や法人登記など実印が必要な83件の手続きを除く、ほぼすべての手続きでハンコが不要になるとしました。

具体的には、以下の行政手続きに認印の押印が不要になります。

  • 住民票の写しの交付請求

  • 婚姻届や離婚届の届出

  • 年末調整や車検の申請書類

しかし、ハンコの効果は有効。「認印全廃」は「ハンコ廃止」ではない

ここで重要なのが、今回の認印の全廃はハンコ自体を全面的に廃止する取り組みではないということです。

そもそも認印とは、印鑑登録を行っていないハンコのことであり、印影を複製しやすいといった理由から、法的な証明力に乏しいとされています。また、私的な契約においても、特別な定めがない限り、認印の押印は契約の成立に必要な要件ではありません。そのため、これまで私たちが行ってきた各種手続きにおける認印の押印は、社会的な慣習として形式的に続けられてきた側面があります。その慣習を見直し、行政手続きにおける無駄の削減を目指したのが、今回の認印全廃の取り組みです。

しかし、先にも述べたとおり、不動産登記や法人登記などの行政手続きでは、今後も実印が用いられます。実印は、市区町村に登録されたハンコであることから、認印よりも高い証明力を有しています。また、法的にも押印が契約への合意や個人の認証を担保するものとして認められていることから、ハンコが今後も有効な手段であることに変わりはありません。

つまり、認印全廃は形式的で実際の効力に乏しい押印を廃止するものであり、ハンコ自体の有効性を否定するものではありません。むしろ、客観的な証明力を備えた実印のようなハンコであれば、今後も契約や書面の信頼性を高める手段として有効的に利用することができます。

「脱ハンコ」時代の契約のカタチとして注目を集める「電子印鑑」

今回の認印全廃により、デジタル化の機運はますます高まると予測されます。

先に挙げた2020年11月13日の記者会見の中でも、河野大臣は「本丸である手続きをオンラインに移していくことに取り組んでいかなければならない」と発言し、行政手続きのデジタル化をより一層推進すると明らかにしました。

また、デジタル化の普及の波は、今後民間にも拡大していくと見込まれます。事実、2020年7月に日本経団連などの民間団体と政府は「書面、押印、対面」を見直すための共同宣言を発表(※3)。民間企業においても、形式的でデジタル化を阻害する商慣行や制度を転換し、時代に適したビジネス様式を確立するとしました。

では、こうした中で、ハンコはどのように変化していくでしょうか。その答えの1つが「電子印鑑」です。

デジタル化が普及すれば、従来ハンコが押印によって担っていた契約への合意や個人の認証といった意思表示を、別の手段により代替する必要があります。電子的に押印でき、「誰が」「いつ」「どこで」「どのよう」に押印したのかといった情報を客観的に記録・証明できる電子印鑑は、ハンコの代替手段になり得るツールです。

先に挙げた共同宣言においても、電子印鑑をはじめとした電子認証の重要性は指摘されており、今後電子署名法内における電子認証サービスの位置づけの明確化などを通じて、さらなる普及促進を図るとしています。

脱ハンコの流れと共に、デジタル化が加速する時代の中で、電子印鑑は次世代の契約や申請手続きを支えるツールとして定着の兆しを見せています。

電子印鑑の導入で業務のムダを一掃

行政手続きにおける認印全廃の取り組みは、年内にも順次進められ、法的根拠がある押印については来年の通常国会で法改正を行う予定です。

そうした急速な社会の変化の中で、合意・契約プロセスのデジタル化は急務。この流れに乗り遅れないためにも、電子印鑑(または電子署名)は必須のツールです。また、導入の際には、併せてこれまでの業務プロセスを見直すことが大切です。これまで「認印の押印」という、形式的な慣習が長年社会に根付いていたように、企業においても内容を伴わない業務が習慣化しがちです。業務のデジタル化はそうした無駄を見極め、削減する機会でもあります。

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