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農業・漁業・建設業で進むDX -「スマート産業」の現在とは

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近年、多くの産業分野でDXが推進され、その潮流は農業や漁業、建設業などの一次産業や二次産業にも及んでいます。ロボット、AI、IoTなどを活用した「スマート農業」「スマートコンストラクション」「スマート農業」について紹介し、DXを推進する際のポイントについて考察していきます。

目次

広大な畑で農作業をする人々

近年、多くの産業分野でDXが推進され、その潮流は農業や漁業、建設業などの一次産業や二次産業にも及んでいます。人口減少や少子高齢化の影響を受け、さまざまな課題に直面している業界において、デジタル技術に大きな期待が寄せられているのです。そこで本記事では、「スマート産業」をテーマに、一次産業や二次産業で進むDXの事例を紹介します。

【スマート農業】ロボット、AI、IoTの活用で生産性の劇的な向上を狙う

農業分野では、近年、後継者不足や高齢化による労働力不足が喫緊の課題となっています。また、熟練を要する農作業が多く、技術や知識の継承が難しいといった課題も浮上しています(※1)。そのほか、国内の食料自給率も低迷が続いています。2021年の食料自給率はカロリーベースで約38%でしたが、政府は2030年までに45%まで引き上げるという目標を掲げています(※2)。このように、農業分野では生産性向上が強く求められており、そうしたなかで注目を集めているのが、ロボット、AI、IoTなどを利用した「スマート農業」です。

スマート農業の事例としては、自動走行トラクターが挙げられます。北海道大学と某農機メーカーは、有人監視下で整地に条撒き(直線に種を蒔くこと)をする自動走行トラクターを共同開発。2018年に市販化し、現在は遠隔監視下での自動走行機能の開発を進めています。この開発が実現すれば、農業従事者一人あたりの作業面積が大幅に拡大し、農業の大規模化が可能になると期待されています。

ほかにも、人口衛星が撮影した畑の画像を解析し、農作物の生育環境を診断・見える化するクラウド型の営農支援サービスも提供されています。これにより、畑の状態に適した作業計画の立案、適切なタイミングでの施肥(肥料を撒くこと)や収穫などが可能となり、農作物の高収量化や高品質化、農作業の省力化が進んでいます。

【スマートコンストラクション】測量から施工、維持保守まで、建設のあらゆる工程を最適化

少子高齢化に伴うベテラン技術者の大量退職により、2025年には全技能労働者の約4割が減少するとされる建設業界。また、建設会社の90%以上が中小規模の事業者であることから、企業規模を問わず労働生産性の向上が求められています(※3)。

そこで国土交通省では、建設に関する全工程をICTでつなぎ、全体最適を実現する「スマートコンストラクション」を提唱しています。スマートコンストラクションにより、建設業界では安全で生産性の高いスマートな建設現場が実現するとされています。

その一例が、ドローンによる高精度な三次元測量です。従来は人の手で行われていた測量作業をドローンが代替することにより、測量の高精度や工数削減が可能になります。また、この測量データを3次元モデルで共有し、施工計画や施工管理に活用することもできます。そのほか、建機に搭載した複数のセンサにより、従来は「熟練の技」とされていた操作技術を数値化。若手技術者への技術継承に活用する取り組みも進んでいます。

こうしたスマートコンストラクションのソリューションを利用した某建設会社からは「ドローン測量により、施工前に施工土量が把握でき、正確な施工計画だけでなく、日々の進捗がリアルタイムにどこでも閲覧できた」「ICT建機は三次元の図面通りに自動制御され、経験の浅いオペレータ―でも仕上がり良く施工ができた」といった声が挙がっています。国土交通省は、これらのソリューションを調査測量から設計、施工管理、維持保守までのプロセス全体に適応することで、建設業の全体最適を目指しています。

【スマート漁業】漁業を効率化し、「成長産業化」を目指す

漁獲量の減少、価格競争、燃料費や餌代の高騰など、漁業分野も数々の課題を抱えています。これらの課題は漁業従事者の収入を不安定化させ、後継者不足や漁村の高齢化・過疎化につながっています(※4)。

そこで、水産庁は「水産資源の持続的な利用」と「水産業の成長産業化」を目指し、「スマート漁業」を提唱しています(※5)。例えば、漁業従事者の経験や勘に頼ることの多かった漁場探索に衛星情報やAIを活用し、魚海況予測システムを開発。漁場探索を見える化・標準化することで、若手漁業従事者への技術継承を円滑化しています(※6)。

また、養殖業の生産性向上も進んでおり、AIによる自動給餌システムや自動網掃除ロボットなどの活用による、省力化や生産量拡大が図られています。現在、国はこうした先進的な設備投資を加速するため、第三者機関による養殖事業者の事業性評価スキームを確立し、金融機関から養殖事業者への投資を促しています。

さらに、水産庁は「2027年までに次世代の水産業の実現を目指す」として、資源評価機関、漁業・養殖業者、加工流通業者が三位一体となったデータ活用も構想しています。前述の漁獲や養殖だけでなく、水産資源評価や物流、商取引などをデジタル化し、漁業のバリューチェーン全体をDXするのが目標です。この実現により、業界全体の生産性や付加価値の向上が可能となり、水産業の「成長産業化」が期待されています。

DX実現のポイントは「バリューチェーン全体のデジタル化」

従来はデジタル化には縁遠いと見られてきた一次産業や二次産業においてもDXが着実に進みつつあります。今回は、農業、建設業、漁業の分野における取り組みを紹介しましたが、それ以外の業種にも示唆的といえるでしょう。現場作業だけでなく、バリューチェーン全体をデジタル化することで、大幅な生産性向上が実現するという考え方は、その他の業界・分野でのDXにも共通します。

例えば、営業会社であれば、顧客管理や営業管理などのデジタル化だけでなく、受発注管理や契約管理など、利益を生むプロセス全体をデジタル化し、それらを相互に連携することでDXが可能になります。つまり、DXの実現には経理や人事、総務といったバックオフィス部門のデジタル化も必要不可欠であり、包括的な視点をもって推進していくことが重要であるといえるでしょう。

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出典:

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