2019年版:米国における電子署名に関する法律の動向
WEAAの廃止、CCPAなどの新しいデータプライバシー法、ESIGN法など、2019年年の米国における電子署名に関する法律の動向を紹介します。
この一年を振り返るとCCPAのような新しいデータプライバシーとAI分析の法律分野における事例の増加のおかげで、電子署名がリーガルテック関連記事の見出しを賑わしてはいなかったような気がします。しかし、2019年は電子署名に対する米国の法律の動きは、決して少なかったわけではありません。実際、2019年の電子署名の立ち位置について言葉で表現するとすると、より広範なユースケース、認知、柔軟性、何度となく開かれた扉、あたりになるでしょうか。
さて、今年の米国の電子署名に関する法律のハイライトをまとめてみたので、一緒に見ていきましょう。
ワシントン州は、これまでの電子署名法はもう必要ないと判断
1999年の統一電子取引法(UETA)を採用したことがない米国の3つの州の1つであるワシントン州は、1997年のワシントン電子認証法(WEAA)で電子署名の法律の運用を開始していました。ただし、WEAAは、署名者の身元を証明するためにデジタル証明書を必要とする電子署名のサブセットである「デジタル署名」のみが認められるという点で、UETAおよびその連邦政府の法律である2000年のESIGN Act(ESIGN法)よりも非常に限定的でした。
長年にわたり、WEAAは、州の電子署名の法的枠組みを、特に技術中立性が原理原則である(つまり特定の電子署名の方式が他のどれよりも法的により良いステータスを持つことがない)UETAおよびESIGNとより整合するように他の法律によって、追加・修正してきました。しかし残念ながら、その断片的な進化の結果、ワシントン州の法律全体で矛盾が生じることになりました。
これらの不整合を解決するために、2019年7月28日にWEAAは完全に廃止されました。州議会の報告によると、廃止は「既存の法律の混乱を一掃する」だけでなく、「民間部門」がWEAAを事実上「閉店」したことも認めてます。この後者で言えることは、電子署名が広く採用されていることを認めている米国では、通常、署名者の認証に州規制のデジタル証明書を使用する必要はないということになります。
WEAAの廃止により、ワシントン州は電子署名の単一のオーバーレイ法を持たない合衆国の唯一の州になりましたが、廃止の明確な意図は、残り続ける非互換性を排除することによりESIGNを受け入れることです。実際、WEAAを廃止した法案は、ESIGNの広範な「電子署名」の定義を他のさまざまなワシントン州法に明示的に付け加えました。
要するに、元々電子署名を促進することを意図していた1997年の先駆的な州法は、2019年に、広範な市場の採用とより包括的な連邦法を考慮して、もはや必要ではないと判断されたということです。
カリフォルニア州には多くの電子署名のユースケースが存在
1999年にカリフォルニア州がUETAを制定したとき、特定のレコードタイプを法の適用範囲から除外しました。表向きは消費者を保護することを目的としており(電子的通信手段がまだ一般的ではなかった時代に遡ります)、このような、賃貸借の通知から、医療サービスの特典のお知らせや、電話勧誘のキャンセルの通知までの除外は、企業が特定の文書に電子記録と署名を必ずしも使用できないことを意味しました。そのようなユースケースの法的サポートは、時間の経過とともに他の法的情報源から導き出す必要があります。
そして、それはまさに起こっていることです。カリフォルニア州のUETA免除は徐々に消えつつあり、2019年には少なくとも2つの業界で進展が見られました。
保険
2019年9月5日、カリフォルニア州知事Gavin Newsomは、カリフォルニア州のUETAと保険コードの両方を修正する法律AB-1065に署名しました。新しい法律は、特定の損害保険文書(住宅所有者や自動車保険など)から始まり、最終的には、キャンセルの通知および生命保険の通知など、より機密性の高い文書も含まれます。達成されたメリットのリストを引用すると、AB 1065は、これらの後者のユースケースを一時的なものにしたサンセット条項を無効にします。このような通知には、電子的記録と電子署名を無期限に使用できるようになりました。
自動車
同様に、2019年10月3日に、NewsomはAB-596を承認しました。これで、自動車のリコールを含む取引に対するカリフォルニアUETAが免除されなくなります。新しい法律は、新しい自動車ディーラーが製造業者のリコールの修理に関して(そのようなやりとりが自動車修理局によって採用された規制と一致している限り)消費者から電子承認を受けることを明示的に許可しています。この変更により、リコールに関する修理を承認するために、消費者がサービスセンターに直接出向いくという面倒な手間がなくなります。
新しい判例法は、電子署名の監査証跡の価値を証明
今年は、州の控訴裁判所が、電子的合意の証拠に依存しているのに、管轄上の根拠に基づいて下級裁判所の判決を覆した、ということもありました。
Designs for Health、Inc.とMillerの裁判は、ヘルスケア製品の販売契約に関する契約不履行でした。審理裁判所は、原告がカリフォルニア州の居住者である被告Millerに対して裁判の人的裁判管轄権がないと認定し、この事件を棄却しました。コネチカット州控訴裁判所は、契約の「裁判地の選択に関わる条項」に基づいて管轄権に基づいて棄却を取り消しました。ドキュサインの監査証跡と原告が提供する他の証拠は、被告(契約書にサインするのに以前ドキュサインを使用していたと裁判所が指摘)に個人的な管轄権を確立するために十分な証拠と認められませんでした。
後に、Loretta-AzukaとExeter Health Resources、Inc .との裁判では 、ニューハンプシャー州連邦地方裁判所は、病院での雇用に関連して契約請求の違反で被告に略式判決を下しました。裁判所は、原告が彼女のドキュサインアカウントを介して関連文書を見直し、電子署名したため、1人以上の被告によって行われた「偽造」による原告の「やや曖昧な主張」は「これらの記録により全く支持できない」と判断しました。
また、JosephとVelocity, the Greatest Phone Company Ever, Inc.との訴訟では、米国オハイオ州北部地方裁判所は、集団訴訟への参加を選択する当事者に対するドキュサインの使用を承認しました。
以上、米国の電子署名の法律に関する今年の重要なハイライトをお伝えしました。2020年にも、素敵な扉が開き続け、みなさんが健康で幸せな新年とこの先ステキな10年となりますように!
米国および世界各国の電子署名の適法性に関する詳細はこちらをご覧ください。
※本記事は米国ドキュサインが発表したブログ記事の抄訳です。